2010-01-01から1年間の記事一覧

塗り替えられていく記憶、常に新しい記憶

撮った写真を最初に見たときに「実物と違う!」という違和感を持つという話を昨日書いたけれど、多くの場合、次の瞬間にはその写真に目は奪われ、その撮った写真を記憶する以上のことができなくなる。実体験は写真によって上書きされてしまう。しかし、中年…

旅の写真

写真をカメラが写すように写るものと達観したり、あるいはカメラが行うデフォルメを楽しむように写そうと心に決めて写す限り、写真に対する不満はそれほど生じることはないけれど、今回の白馬岳登山のように、記録のための一枚を目指したとたんに映っている…

栂池高原-白馬大池-白馬岳-蓮華温泉(5)

【3日目】■白馬岳から白馬大池へこの日は山頂直下の幕営地から山頂を越え、ふたたび白馬大池まで下る短い行程である。 朝 4時に目を覚ますと、頭上には天の川が流れ、満天の星がまたたいていた。そうした空を見たのは、いったいいつぶりだろう。ひさしぶりに…

栂池高原-白馬大池-白馬岳-蓮華温泉(4)

■白馬大池から白馬岳へ 白馬大池(2469m)に着いたのは午前11時前。 この日はここに幕営し、翌日白馬岳にピストンで出かける計画だったのだが、同行者が「まったく疲れていない」というので、予定を変更して山頂まで登ることにする。「雷鳥坂」と名付けられた…

栂池高原-白馬大池-白馬岳-蓮華温泉(3)

【2日目】■白馬乗鞍岳を超えて白馬大池へ久しぶりに本格的な山に行くことになり、事前準備のために情報を収集しようとネットを検索してみると、登山愛好家が綴っている質の高い山行記録のブログが山ほどある。ブログを数年書いていて、さらにときにはこうや…

栂池高原-白馬大池-白馬岳-蓮華温泉(2)

■栂池ヒュッテ今回の山行で最初の夜に泊まったのは栂池ヒュッテ。この施設を山小屋の延長線上にあるものと思い込んでいた僕は、あまりに洗練された施設にびっくりしてしまった。もし、逆にここが旅館やホテルの一種だと考えて泊まった人がいれば不平不満を洩…

栂池高原-白馬大池-白馬岳-蓮華温泉(1)

北アルプス・白馬岳に夫婦で登ってきた。日頃の垢を落としに本物の垢をしこたま作りに行く旅である。本格的な山登りからはずいぶんと遠ざかっており、アルプスに足を踏み入れるのは、やはり二人で20代半ばに北岳に登って以来になる。テント行も、30歳以降は…

小さいけれど、はっきりとした心の高揚

『technophobia』のphoさんがこれまで携わってきた特許関係の仕事をいったん辞めて、キャリアを深めるためにシンガポールの大学院に行ったり、勢川さんが、ミシン型発電機の延長線上でインドに行ったり、このところ立て続けにこの界隈で海外体験にまつわる話…

今年の夏は白馬に登る

今年になってから夫婦で山登りを始めた。結婚前に、丹沢、北岳と、何度か一緒に登ったのは、もう20年以上前の話。だから、やりなおしというのもおこがましい、ほとんど初めて同様の山歩きを50歳を通り過ぎて開始したことになる。これがなかなか楽しい。もっ…

洗練されたビューアーがブログを進化させんことを

自分自身のニーズとしてはっきりわかったことがある。僕がいま欲しいガジェットは、電子出版を読む端末ではなく、ウェブコンテンツをもっと手軽に、目に優しく、気軽に、紙の雑誌を読むようにして読むデバイスである。この数ヶ月、電子出版のニュースはウェ…

電光一閃

ある種の情報はその神秘性ゆえに付加価値をまとう。こういうのは辛いねえ。 ■しゃーないから、My Open Archiveに投稿してみたyo!(『simpleA』2010年7月6日) ■「おとといきやがれ」って言われたので、これはチャンスだね(『simpleA』2010年7月8日) 評価軸…

東京国際ブックフェア

東京国際ブックフェアに行く。一昨年、昨年に続いて3度目の訪問だが、過去2度の体験と比べると、今年のショーの様子はかなり違って見えた。昨年まではいかにも本の展示会ですという体裁だったのに、今年はむしろITの催し物に出版社の出展がくっついているか…

ワールドカップ(その2)

日本対パラグアイ戦のテレビ視聴率が関東では 60%だったということだから、この界隈でももっとブログのネタになってよさそうなワールドカップだが、実際にはそうはなっていないのはなかなか興味深い。これだけメディアが報道に明け暮れれば、いまさらブログ…

ワールドカップ

3年目となった金城さんのシュポは、過去2回会場だった津田沼のテント酒場がなくなってしまい、今年は目黒のパブ「Black Lion」での開催。横浜在住者にはありがたいロケーションだったが、2ヶ月前に告知された日取りと時間帯は、その当日となってみたら4年に1…

我らが井戸端のあたたかさ

先日、小野さんのお子さんの話を読ませて頂き、思わず感想を綴ったのだが、僕の書いた稚拙な内容に比べるとこちらは本当にすばらしい。 ■門をくぐる(『雪泥狼爪』2010年6月9日) 涙が出そうになる。ブログはいいものだなとあらためて思う。

いずれにせよ終わりつつある産業という認識

書籍出版を文化の営みとしてではなく、もっぱらビジネスとして考えると、雑誌を合わせてもせいぜい売上規模で2兆円にいくとかいかないとかといったレベルだ。大きな企業ならば、1社か2社で稼ぐぐらいの規模だから、産業としてはとても小さい。いま、マスメデ…

小野さん、がんばれ

小野さんちのお子さんが幼稚園に行きたがらないらしい。情報はそれだけ。さて、どうする? と考える時に人生の岐路が目の前に現れる。子供にとっても親にとってもそうで、気がつくと自分のことだけを考えていればよかった時期は過去のものになっているのを知…

私にとっての吉田秀和の先

mmpoloさんが、吉田秀和が小林秀雄について書いた最近の文章を紹介していらっしゃる。■吉田秀和の小林秀雄批判(『mmpoloの日記』2010年6月4日) 僕もかつてブログで何度か取り上げた話題だ。 ■疾走するかなしみ(2006年11月13日) ■小林秀雄の断定(2006年1…

電子でも紙でも変わらないこと

iPadの発売で電子書籍は世の大きな話題になってしまった感がある。なんだか頭がくらくらするよう。さまざまな端末を消費者が選べるようになるのはよいとして、あれやこれやのフォーマット、さまざまなプラットフォームが乱立して、大きな会社ならいざ知らず…

先が見えないいまこの場所にて

鳩山総理大臣が辞める。政争の話ばかりが盛り上がる。政策の話が新聞やテレビから簡単に飛んでしまい、なにがなんだか。そんなことを考えながら、コーヒーの上からクリームを垂らす。焦茶色に濁った紙コップの表面にコーヒークリームが白いまだら模様を作る…

未来を人よりも先に歩く男の言葉を追いかける

昨日は未来生活デザイナー・美崎薫さんと本作りの打合せをした。いや、打合せをしたと書くのは少々嘘っぽくて、僕は担当編集者のUさんの後にくっついて出かけ、二人が真剣に打合せをするのを横目にコーヒーを啜り、ときどきへらへらと茶々を入れていただけな…

iPadで刺激される物欲について

iPadとキーボードを購入し、家でノートパソコン代わりに使おうかと思っていたのだが、天の邪鬼の性格故に販売店の混雑ぶりを眼にすると「皆が競って買うものを自分もあわてて手に入れることはない」という気分になる。モノ自体は勤め先のUさんが予約購入した…

iPadブーム

勤めの帰り、家電量販店に寄った。iPadのコーナーは黒山のというのは大袈裟だけれど、結構な人だかり。一方、その隣に広がるノートPCのコーナーは閑古鳥が鳴きそうなありさまである。その横に立ってお客さんが店員さんに質問をするさまを見ながら、これは本…

本当に行ってくれるとは思わなかった

ちょっと感激。phoさんの行動力にも、懐かしい風景にも。■ニューヨーク郊外からの通勤列車の旅(『technophobia』2010年5月27日)メトロノース鉄道は、3つの線がマンハッタンの中心であるグランドセントラル駅から北に向かって放射状に伸ばしており、phoさ…

kindleの「印税」70%騒動の一端は「印税」の解釈違い?

電子書籍に対する急激な関心の高まりには「アマゾンがアメリカでやっている電子書籍のスキームは販売価格の70%を著者に還元すると言っている。現行の紙の書籍では10%なのが電子書籍になれば70%! こりゃおいしい!」という著者やその予備軍の皮算用が大き…

田代真人さんの講演を聴いたり、ニューヨークのkindleを思ったり

アゴラ起業塾「成功する電子書籍ビジネス」を聴講してきた。講師は株式会社アゴラブックス取締役の田代真人さんで、編集者として長く活躍なさっている方だ。講演の内容は出かける前に想像していたのとは正反対だった。アゴラブックスの役員の話だから、電子…

そんなわけないだろ、と言いたくなる

■ナックル・プリンセス、米でも人気 本拠地でサイン会これを読めば「ナックル姫はアメリカでも注目されている」と勘違いをする日本の読者は出てくる。そのような作りの記事である。しかし、田舎町のおじさん、おばさんが40人集まりましたというだけのイベン…

子供のスポーツで監督になり、いばっているおじさんの気持ち悪さ

『もしドラ』の高校野球部マネージャーである主人公が「甲子園に行く!」をチームの目標に定めたのは、現実にはマネジメントの失敗につながりかねないという、ちょっと大人げなく聞こえるおそれもある感想を前回のエントリーに書いた。ところが実際の高校野…

岩崎夏海著『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』

『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』は、いま本屋さんに行くと必ず人目に触れる場所に並べられており、どうやら相当売れているらしい。舞台は東京の進学校野球部。練習に取り組む部員もまばらな万年負けチームの女…

エンドユーザーにとって電子書籍は何と競争しているのか

一昨日の朝、『The Power of Words』で『もしドラ』をiPhoneで読んだら紙の本よりも読みやすかったという話を読んで、好奇心が疼き、すぐに当の電子書籍を購入。■もしも「もしドラ」をiPhoneで読んだら(『The Power of Words』(2010年5月19日) その夜に開…