小さいけれど、はっきりとした心の高揚

『technophobia』のphoさんがこれまで携わってきた特許関係の仕事をいったん辞めて、キャリアを深めるためにシンガポールの大学院に行ったり、勢川さんが、ミシン型発電機の延長線上でインドに行ったり、このところ立て続けにこの界隈で海外体験にまつわる話題が発信された。

■インドで(『勢川びきのX記』2010年7月29日)


この地に来たからか、仕事を辞めたからか、原因はいまいちわからないけど毎日楽しい。仕事はそんなに嫌いじゃなかったんだけど、想像してた以上に今のびのびしている。かつて当たり前だと思われていたことは、一時的にそうなっていただけで、別に当たり前でも何でもないし、実際に離れてみるまでわからなかったことばかりだと気付かされる。少しどうでもいいと思っていたことが、本当にどうでもよく感じたりする。
■一週間経った(『technophobia』2010年7月28日)

勢川さんがマンガで語っている無意識のうちにこびりついた心の垢が、異郷でぽろぽろと落ちてゆく感覚、phoさんが語っている「想像以上に今のびのびしている」感覚。偶然二日続きでブログの上に表れた、濃密な充実感の表現に心の琴線が振動した。お二人が現実に何を考え、どのように感じたのかはご本人ではない僕には分からないのに、その言葉に動かされたのは、僕の中にある過去の体験が呼び起こされるからだ。それを実感を伴った記憶として、同時に幾分かは第三者が他人の物語を読むような突き放した気分も伴って、東京で枠にはまった生活を送る僕は眺める。20年前なら、いてもたってもいられないという風に感じただろうに、いまはこの場所でどうやったら、お二人の体験のこだまのようなものを味わうことができるだろうかと考えたりする。場所を変えること、日常の時間の襞に分け入ること、過去を思い出すこと。そんなことをとりとめもなく。

それにしても、ブログがなければ、こうした脊髄反射に近いような、瞬時にまばたく火花のような感動が伝わる幸運には容易には巡り会えなかったかもしれない。