2014-01-01から1年間の記事一覧

ノット指揮東京都交響楽団のブルックナー交響曲第3番

ジョナサン・ノット指揮の東京交響楽団でブルックナーの交響曲第3番を聴いた(12月13日/サントリーホール)。ブルックナーの3番を実演で聴くのは去年の春にマゼールとミュンヘン・フィルを聴いて以来。このコンビの演奏は遊び心満載で余裕に満ち、ここ数年…

カンブルラン指揮読売日本交響楽団の『英雄』

カンブルラン指揮の読響を聴いてきた(11月29日、サントリーホール)。モーツァルトの『魔笛』序曲、シューマンの『ライン』、とりがベートーヴェンの『英雄』の3本立て。名画館で『カサブランカ』と『ローマの休日』の2本立てを観てきましたというのにほぼ…

青柳いづみこ著『アンリ・バルダ 神秘のピアニスト』

青柳いづみこの『アンリ・バルダ 神秘のピアニスト』は興味深い読書だった。本を手にとった際の期待を裏切るという点では失敗作と呼びたい出来だし、それが言い過ぎだとしても、これは演奏家論としてはせいぜい佳作というにとどまる程度の内容じゃないだろう…

ジェームズ・ゴールウェイのコンサート

フルートのジェームズ・ゴールウェイのコンサートに行ってきた(10月19日、トリフォニーホール)。ゴールウェイは、20世紀の後半、あるいは最後の四半世紀に名を残すフルーティスト、ランパル、ニコレ、ツェラー、あるいはガッゼローニ、グラーフ、デボスト…

心を統べる技術

つい先日、在京の某オーケストラでベートーヴェンを聴いた。帰りがけの電車でツイッターを除くと、最近のコンサートの常で、もういくつものツイートが当の演奏会に関して流れている。ほぼ絶賛。もちろん、終わったばかりのコンサートについて一言しゃべりた…

嘘くさい物語

本屋で文芸書のコーナーに立った時に、面白い物語を読みたいと思った。えいやとある日本人作家の長編を購入し2日で読了したが、これでいいはずないだろうと言いたくなるような代物だった。有名な賞をとった人が名の知れた出版社から出している本とは到底思え…

ブロムシュテットとN響のモーツァルト、チャイコフスキー

昨晩、ブロムシュテットとN響でモーツァルトの40番とチャイコフスキーの5番という名曲コンサートを聴いてきました。N響のアンサンブルは目を見張るというべきか、耳がそばだつというべきか、最近聴いてきた日本のいくつかのオケとはレベルがまったく異なる出…

下野竜也指揮読響のブルックナー交響曲第9番

下野竜也指揮の読売日本交響楽団でハイドンの交響曲第9番とブルックナー交響曲第9番を聴いてきた(9月9日、サントリーホール)。9月9日に2つの9番という洒落なのだそうだ。1年半前に同じコンビで聴いたブルックナーの5番がたいへんに素晴らしく、その印象…

東京でのコンサート通い

敬愛する音楽評論家、吉田秀和は一流にしか興味がない人だった。吉田さんはコンサートや録音の時評も好んでやったが、日本の音楽家はほとんどその対象には上らなかった。どこかが突き抜けている人、突き抜けようとしている演奏しか相手にしようとせず、その…

ジョナサン・フランゼン著『フリーダム』

『フリーダム』(訳:森慎一郎)は、数年前に出たアメリカ人作家ジョナサン・フランゼンの作品で、ニューヨーク生まれのヒロインが家族との関係がうまくいかずに故郷を離れて中西部で大学以降の生活を送り、夫と知り合い、その友人と三角関係に陥り、子ども…

デュトゥルトル著『フランス紀行』

朝っぱらから大リーグの試合を生放送で試聴できたり、ベルリン・フィルの定期演奏会をインターネット経由で聴けたり、アメリカの新聞記事をアメリカ人が読むのと同じ日に読んだりなんてことは、自分が子供の頃には想像すらできなかった。それを考えると、か…

ピアノは担ぐためにあるのではなく

もちろんピアノは担ぐためにあるのではなく、弾くためにある。あるいは聴くためにある。ピアノが弾けない僕にとって、それは後者、もっぱら聴くためのものとして存在している。ところが、我が家でピアノを弾いていた子供が就職して家を出てしまい、生のピア…

ピアノを担いだ大リーガー

野球好きにとって今年の観戦の目玉は、言わずと知れた田中マーくんのメジャーリーグ挑戦だが、ちょっとすごいことになってますね。今日もブルージェイズを3対1で破り、この時点で勝ち星がメジャートップの11勝1敗。防御率が1.99でアメリカンリーグのトップ。…

身辺雑記

吉本隆明著『フランシス子へ』を読んだ。吉本さんが亡くなる数か月前に取材した聞き書きの一冊で、一周忌にあわせるように出た本だから、もうすでにしばらく前から吉本さんの本はそんな風に出来ていたとはいえ、これを吉本さんの「最後の著作」と受け取るの…

ノット指揮東京交響楽団のマーラー交響曲第9番

昨日は東京交響楽団が新しい音楽監督であるジョナサン・ノットを迎えてのお披露目コンサートに行ってきた(4月20日/サントリーホール)。ノットっていい指揮者だと思った。聴くのは録音を含めて初めて。振りも出てくる音楽も、実にくっきりとしているが、分…

ここは少し薄暗く、すべての存在が明瞭な輪郭を欠いてる。それでもホテルのロビーらしいということは自明の範疇に属している。らしいと言うのは、それが夢の中の話で、それ以上でもそれ以下でもないのだから、そこにはらしいという以上の現実は存在しないと…

スティーヴン・キング著『11/22/63』

久しぶりに分厚いエンターテイメントを読んだ。スティーヴン・キングの『11/22/63』。おしゃれなタイムマシンものの長編である。奥さんに逃げられ、空虚な思いを抱える主人公の高校教師が、時間の穴をくぐってケネディを助けに1960年代のアメリカに出かける…

年頭の辞

何だか嫌な時代になってきましたね、と問わず語りに自分に向かって語りかける機会が増えてきた。先が皆目見えない。自分だけではなく、恐らく多くの人にとってそういう気分を感じてるのではないかと考えたりする。時代の息苦しい空気がPM2.5のようにうっすら…