今年の夏は白馬に登る

今年になってから夫婦で山登りを始めた。結婚前に、丹沢、北岳と、何度か一緒に登ったのは、もう20年以上前の話。だから、やりなおしというのもおこがましい、ほとんど初めて同様の山歩きを50歳を通り過ぎて開始したことになる。これがなかなか楽しい。

もっとも山登りと言っても、簡単なコースをゆっくりと歩く、典型的な中高年風山歩きの類である。丹沢の大山や大野山、金時山安達太良山といった標高差が小さく歩きやすい場所を選んで、無理のないペースで楽しんでいる。こういう山は若い頃はしたことがなかったし、一昨年までやっていた単独行では、若い時分の山の延長線上で、わっせわっせとやり続けていたので、非常に新鮮でいい。二度目の人生が始まった感すらする。

というわけで、今年の夏は表題の通り北アルプスは白馬岳(2932m)に行くことにした。アルプスと名のつく場所に行くのは、長男が3歳の時に上高地乗鞍岳に行って以来、本格的に歩くのは、高校山岳部時代の仲間3人で20代前半に同じ白馬岳から日本海の方まで歩いて以来だから20数年ぶりのことになる。

でも今回は、20年前とはまるでちがって、栂池高原のロープウェイを使って1800メートルの高度を稼ぎ、そのあと2泊かけて山頂までゆっくりと歩く計画。それでも、運動不足、筋力減退の身体で本物の山に向かうのは容易ではない。おまけに今回は久方ぶりの幕営山行。ちっとは体を慣らしておかねば、と寝る前に坂道を荷物を背負ってトレーニングがてら歩き始めた。おかげでブログを書くのがおざなりになったりしているのだが、残念ながらあれもこれもは難しい。日が暮れて、昼間の暑気が一段落した頃には、ジョギングの人たち、ウォーキングの人たち、それに今日は生まれてはじめてノルディックウォーキングのご夫婦にもすれ違ったが、それら体を真面目に動かす面々を横目にリュックを背にした変わった中年が坂道をえっちら、おっちら。そのようにして、自分の体力が示すところを汗にまみれながら実感するのは、頭でっかちなサラリーマン生活を送っている人間にとっては、とてもとても大切なことだと思う今日この頃である。なんというか、さまざまな意味で、生きるために重要な謙虚であることを忘れずにいるための、もっとも簡単な方法であるように思う。