山歩き

尾瀬

尾瀬を夫婦で歩いてきた。連休の喧騒を外し、休みをとって月曜日から3日間。尾瀬に出かけるのは2回目だが、1回目は白馬岳とほぼ同じ24年か25年ほど前のことで、その時のことは、これも白馬岳同様ほとんど記憶に残っていない。季節は春で、天気が悪く、遠くの…

自然は変わらないが、人の欲望はもっと変わらない

先日、白馬岳の帰りがけに蓮華温泉を訪れたら、蓮華温泉ロッジの廊下に、日本アルプスの紹介者にして日本に近代登山を導入した人物であるウォルター・ウェストンの写真と、彼がこの地を訪れたことを紹介する一文が掲げてあった。ウェストンは、19世紀後半の…

なんとか北アルプスに登れた理由

昨日、下川さんから「膝大丈夫?」とやさしくお声がけいただいたので、その話を少し。春に大山に登ったときに膝が痛くて、やはり山は無理かもしれないと思った。そもそも2年前に泊まりがけで丹沢主稜を歩いたときに、とりわけ下りで大いに難儀し、この体験以…

一眼レフだったら

白馬岳に登る際、一眼レフを携えての登山は諦めた。テントを加えたザックは16キロ強。かつて、20代の頃ならば、これしきの重さは「ほとんど空身」と思ったことだろう。実際、かつては20キロ以下の荷物で幕営山行などしたことはない。しかし、わたくしはもう2…

旅の写真

写真をカメラが写すように写るものと達観したり、あるいはカメラが行うデフォルメを楽しむように写そうと心に決めて写す限り、写真に対する不満はそれほど生じることはないけれど、今回の白馬岳登山のように、記録のための一枚を目指したとたんに映っている…

栂池高原-白馬大池-白馬岳-蓮華温泉(5)

【3日目】■白馬岳から白馬大池へこの日は山頂直下の幕営地から山頂を越え、ふたたび白馬大池まで下る短い行程である。 朝 4時に目を覚ますと、頭上には天の川が流れ、満天の星がまたたいていた。そうした空を見たのは、いったいいつぶりだろう。ひさしぶりに…

栂池高原-白馬大池-白馬岳-蓮華温泉(4)

■白馬大池から白馬岳へ 白馬大池(2469m)に着いたのは午前11時前。 この日はここに幕営し、翌日白馬岳にピストンで出かける計画だったのだが、同行者が「まったく疲れていない」というので、予定を変更して山頂まで登ることにする。「雷鳥坂」と名付けられた…

栂池高原-白馬大池-白馬岳-蓮華温泉(3)

【2日目】■白馬乗鞍岳を超えて白馬大池へ久しぶりに本格的な山に行くことになり、事前準備のために情報を収集しようとネットを検索してみると、登山愛好家が綴っている質の高い山行記録のブログが山ほどある。ブログを数年書いていて、さらにときにはこうや…

栂池高原-白馬大池-白馬岳-蓮華温泉(2)

■栂池ヒュッテ今回の山行で最初の夜に泊まったのは栂池ヒュッテ。この施設を山小屋の延長線上にあるものと思い込んでいた僕は、あまりに洗練された施設にびっくりしてしまった。もし、逆にここが旅館やホテルの一種だと考えて泊まった人がいれば不平不満を洩…

栂池高原-白馬大池-白馬岳-蓮華温泉(1)

北アルプス・白馬岳に夫婦で登ってきた。日頃の垢を落としに本物の垢をしこたま作りに行く旅である。本格的な山登りからはずいぶんと遠ざかっており、アルプスに足を踏み入れるのは、やはり二人で20代半ばに北岳に登って以来になる。テント行も、30歳以降は…

今年の夏は白馬に登る

今年になってから夫婦で山登りを始めた。結婚前に、丹沢、北岳と、何度か一緒に登ったのは、もう20年以上前の話。だから、やりなおしというのもおこがましい、ほとんど初めて同様の山歩きを50歳を通り過ぎて開始したことになる。これがなかなか楽しい。もっ…

新たなステージ

一昨年、丹沢主稜を歩いたときに下りでひざを痛めて以来、怖くて山には登れなかったのですが、昨日それ以来の山登りに行ってきました。といっても登山としてはもっとも軽量級の部類で、ハイキングというのもおこがましい程度のもの。行ったのは大山です。大…

西から東から

rairakkuさんが14日の朝5時に北岳から撮った富士山を紹介していらっしゃいます。■富士山との出会い(『rairakkuの日記』2008年8月15日)その日のその頃、寝床をはい出した私は、西の空に鎮座する富士山を目にして「おや、今日も夏の富士山が見えてらあ」と思…

加藤文太郎、植村直己

今日は「ブログを書かない日」と決めていたのですが、勢川さんのエントリーに背中を押されて出てきてしまいました。■危険な登山(2008年6月11日)何の話かというと新田次郎です。勢川さんが『孤高の人』と『強力伝』をとりあげていらっしゃいます。新田次郎…

誰もいない山中を歩くような文章書き

10代、20代の頃は山と音楽にのめりこんでいましたが、結婚し、子供ができて山登りから遠ざかりました。その頃までは友人とザイルを片手に飛沫を浴びながら滝を昇っていく「沢登り」というジャンルの遊びに熱中していたのですが、子供ができると下手をすれば…

丹沢主稜・膝がくがく山行

二日間かけて丹沢を歩いてきた。丹沢・大山国定公園の最高峰、神奈川県で最も高い蛭ヶ岳(ひるがだけ)の山小屋に一泊し、西丹沢の名峰、檜洞丸(ひのきぼらまる)を目指す、いわゆる“丹沢主稜”と呼ばれるコースである。天気予報によれば午後から晴れの天気…

大倉尾根から鍋割山へ

一年ぶりに表丹沢を日帰りで歩いてきた。『koichiro516の日記』で素敵な桜を紹介するエントリーの最後に大山の写真が登場したのを見た瞬間とたんに「丹沢行きたい」と心が動き始め、ほぼ一年ぶりの山歩きをしてきた。 ここ数年、毎度のように丹沢大山国定公…

もっとも怖かった山の怪談話

山に登るとテントで山中泊なんてことになり、真っ暗で動物のうごめく気配しかしない場所ですから、怪談話などするのには絶好な訳です。高校生は、そういうの大好きですから、よくやりました。その中で、一番怖かった話をお教えします。そのときは6,7人が一…

山には死の臭いが立ちこめている

おそらく敏感な臭覚を持っている人なら、容易にそれを嗅ぎ取るにちがいない。登山客が押し寄せる山には死の臭いが立ちこめている。一昨日、中高年登山者の事故に出会ったと書いた丹沢・大倉尾根は普通の登山客が日帰りで上り下りする場所で、決して危ないと…

塔ノ岳に登る

昨日は一年ぶりに日帰りで山に登ってきた。行き先は相模湾を見下ろす丹沢大山国定公園の塔ノ岳(1491m)。ここ数年、この時期に登るのを年中行事のようにしている山だ。最初に登ったのが中学生の頃なので、30年以上前のこと。もう何十回登ったかしれない場所だ…

揃えられていたサンダルと登山靴

庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』(1969年)の冒頭に「エンペドクレスのサンダル」の話が出てくる。どんな文脈かというと、こんな感じ。高校三年生の主人公、薫くんにガールフレンドの由美ちゃんから電話がかかってくる。由美ちゃんは薫くんにこんなとって…