大倉尾根から鍋割山へ

一年ぶりに表丹沢を日帰りで歩いてきた。『koichiro516の日記』で素敵な桜を紹介するエントリーの最後に大山の写真が登場したのを見た瞬間とたんに「丹沢行きたい」と心が動き始め、ほぼ一年ぶりの山歩きをしてきた。
ここ数年、毎度のように丹沢大山国定公園の中で大山とともにもっとも人が訪れる塔ノ岳に年に一度登っている。昨年は少し趣向を変えたが、ほとんどは、その単調さ故に“バカ尾根”の愛称を持つ大倉尾根を往復する、それこそ単調このうえないバカハイキングを続けている。年に一度、体力の現状を確認するようなハイキング。そのためには同じコースを歩くのが分かりやすい。高校生の頃から何十回となく上り下りをしている場所なのだが、それでも上るたびに楽しい。
今回は大倉尾根を登り、塔ノ岳に着く直前で西の方角に尾根をたどって鍋割山(1272m)を目指すことにした。鍋割山への道はブナ林が美しい。まだ山は丸裸だが、日射しは春だ。

三つの電車を乗り継ぎ、さらにバスに揺られて15分、塔ノ岳への登山基地である大倉に到着する。かつてはひなびた農村で、おんぼろのおみやげもの屋が並んでいる場所だったが、きれいに整備されて昔の面影はまるでない。満開の桜の木が迎えてくれた。




大倉尾根は塔ノ岳(1492m)までほぼ3時間の行程。最初は尾根に出るまで杉林の中を緩く登りはじめる。



30分ほど歩くと幅広い尾根へと出る。ここから本格的な登りが始まるのだが、若い頃と違い、最初から「歩こう、歩こう、私は元気〜」という調子でいくと最後にしっぺ返しを食らう。十分に注意が必要。ゆっくり、ゆっくり。がんがん登りたくなるのを抑え、抑え、スタミナを温存しながら、一歩一歩足を踏み出すように進む。



見晴茶屋を過ぎる。大倉尾根には要所にこうした山小屋があるので、比較的気楽に歩ける人気ルートになっている。



ここからは急に傾斜が強くなる。慣れてない人はここからがんばりはじめて後で足が止まってしまう。山はまだ新芽が芽吹くのもこれから。現地で歩いているとそうでもないのだが、こうやって写真にすると、モノトーンの味気なさが際だって見える。



鹿さんに出会った。



ひと登りすると、また傾斜が緩やかに。大倉尾根は急登、緩やかな場所が何度が繰り返される。ペースを一定に保つのが難しい。この尾根で調子を崩す理由がこれだ。



さらにひと登りすると駒止茶屋が見えてくる。この先が堀山と呼ばれるこの尾根の中間点。再び傾斜が緩くなると同時に東に大山や三ノ塔、西に富士山が見えてくる。



今日はじめての富士山は雲をまとっていた。天気は良いが、空気はどんよりとしていて眺望はいまひとつ。



左手にこれからたどる鍋割山稜が見えてきた。



堀山を過ぎるとまた急登が始まる。これからがこの尾根の本番だ。ここまで頑張りすぎた人はこの辺りで急にペースが落ち始める。



去年はこの辺りで遭難者の方に行き当たった。



黙々と登る。振り向くと、眼下に広がる相模平野と相模湾。右手に裾野を引く箱根連山が連なる。ここまで来ると足はがくがく。でも、こころは一挙に昂揚。



2時間半ほどで塔ノ岳直下の花立に到着。東には三ノ塔(1205m)、その向こうに大山(1252m)が聳える。



花立の先から塔ノ岳山頂を望む。山頂まであと20分ほどだが、ここから左手に折れて鍋割山への道へと進む。



鍋割山稜のブナ林はとても美しい。5月になると緑が目にしみる場所だ。



鍋割山稜の空中庭園を進む。


鍋割山の辺りから見た丹沢主脈。一番左の峰が丹沢の最高峰である蛭ヶ岳(1672m)。



鍋割山に到着。



この日の富士山は残念ながら最後までうすぼんやりとしていた。



山頂から望む箱根。



昼ご飯をすませて下山へ。どんどん下る。下り始めると左膝に違和感を感じ始める。今年はけっこうまともに足が動いていると思ったのだが、そうはとんやがおろさない。びっこを引きながら、杉林を過ぎて下界へ。



林道まで下りついた。あとは砂利道を4キロ、出発点の大倉まで歩くだけだ。



林道の途中から、さっき降りてきたばかりの尾根を振り返った。



あと5分で大倉のバス停。この辺りには生花を栽培する農家が多い。山はまだ冬だが、あらためて春の到来を強烈に実感できる。



菜の花。