漫画音痴の小さな感想

『simpleA』の金城さん(id:simpleA)が主宰するおしゃべりの会にいって驚くのは、僕を除くほとんどの人たちがアニメや漫画の話題になるとすっと水を飲むように自然に反応することだ。その様子を見ると、とたんに自分が別世界に佇んでいるような気分にさせられる。本来、漫画は嫌いではないのだけれど、テレビドラマをほとんど見ないのと同様、最近はまったく読まない。『SLAM DUNK』はよく知ってますという程度なので、勢い馬鹿にされるしかない。ましてやアニメは「???」の世界で、彼らがやりとりする固有名詞は、僕の前では単なる音のまま固まってしまい、悲しいかな想像力は微塵も発動しないのである。

人間、限られた持ち時間の中で森羅万象に通じるわけにはいかないので、捨てる領域があるのは仕方がないが、あの、皆さんが楽しそうに情報交換をしている様子を見ると、端的に世代間ギャップを感じるし、どうやら文学的な想像力はそっちの方面に行ってしまっているのに、創造の主流から自分はおいてけぼりをくらっているようだと率直に感じられてしまう。金城さんいわく、日本のよいところは面白い漫画があることだと言うぐらいだし、このおいてけぼり感は「隣の芝生は青い」のたとえでは終わらないのではないか。

そんな僕が最近読む漫画と言えば、年に一度単行本になる浦沢直樹の『PLUTO』と勢川びきさん(id:segawabiki)の四コマ漫画ということになる。文学的な作品、映画のようなストーリー性に優れた作品は漫画の醍醐味だが、与えられた制約の中で技を競う四コマの面白さは時代を超えて生きている。これは立派な日本の文化だ。辛い勤め人稼業を笑い飛ばす勢川さんの漫画を見ていると、開高健が言っていた「泣くがいやさに笑い候」という文句を思い出してしまう。そして、その姿勢をお手本にしなければ、といつも思う。