栂池高原-白馬大池-白馬岳-蓮華温泉(4)

白馬大池から白馬岳へ


白馬大池(2469m)に着いたのは午前11時前。



この日はここに幕営し、翌日白馬岳にピストンで出かける計画だったのだが、同行者が「まったく疲れていない」というので、予定を変更して山頂まで登ることにする。「雷鳥坂」と名付けられた緩い上り坂にとりつく。白馬岳山頂には、乗鞍岳から下った道を大池にそってV字にターンする格好だ。一転して歩きやすい道にゆっくりと高度を上げる。



この日、青空も時々のぞきはするものの、登る間中周囲を常に白い雲が流れ、眺望は限られていた。雷鳥坂の途中から上部を望むが、これから登る小蓮華山、その先にある白馬岳への稜線は厚い雲の中。



最初に見つけた一群のコマクサを写真に収める。この時期、このコースには最初から最後まで、さまざまな高山植物が咲き誇り、登山者は飽くことがない。しばしば立ち止まって見入ることになる。







小蓮華山(2766m)の山頂は近い。



小蓮華山を超える。白馬大池からの標高差300m、歩行時間約2時間。栂池ヒュッテからは5時間半だ。目的地の白馬岳まで、標準コースタイムであと1時間半。ここからは白馬岳が大きく見えるはずだが、風景はガスの中。稜線を黙々と登山者が行く。



雷鳥さんに出会えた。雷鳥はこの日3度、翌日も2度も目にすることができた。花も動物も、生き物との邂逅には心がなごむ。



厚かった雲が次第に薄くなってきた。周囲の風景が雲間に見えるようになってくる。そうこうするうちに縦走路の右手を走る雪倉岳の稜線がくっきり眼に入るようになってきた。二十数年前に歩いた場所を久しぶりに目にする。



これは期待できるかもしれないと、空模様の好転に励まされながら歩を進めると、突然目の前に白馬岳(2932m)の山頂が現れる。写真ではよく分からないが、東側が絶壁となって落ちる白馬岳は迫力満点。まだ、頂上はあんなに高いところにある、とちょっとがっくりもする。この辺りから急に疲れが出てきたらしい。標高差であと250mほどの場所だ。



荷物の重さに足の裏が痛む。1時間前の雲が嘘のような青空の下、山頂へもうひと登り。



白馬山頂の展望盤。新田次郎の『孤高の人』で主人公の強力・小宮山正が運んだのがこれだ。



山頂からは、歩いてきた稜線がきれいに見渡せた。



この日は山頂を越えておよそ200m下った白馬岳頂上宿舎のテント場で幕営。我々が到着した頃にはほぼ満杯に近い状態で、賑やかな大学の登山サークルの脇にテントを張った。頭上に日本有数の規模を誇る山小屋、白馬山荘、その向こうに白馬岳の頂上を見上げる窪地だ。