加藤文太郎、植村直己

今日は「ブログを書かない日」と決めていたのですが、勢川さんのエントリーに背中を押されて出てきてしまいました。

■危険な登山(2008年6月11日)

何の話かというと新田次郎です。勢川さんが『孤高の人』と『強力伝』をとりあげていらっしゃいます。新田次郎は中学生の頃、山登りを始めた頃の愛読書で、のめりこむようにして読みました。とくにご紹介なさっている一冊目の『孤高の人』。主人公の登山家・加藤文太郎は関西の登山界で名をなした実在の人物ですが、これを読んで新田次郎が造形した加藤に感情移入し、当時生活の中心だった山登りへの熱はますます高まりました。加藤は「単独行の加藤」と呼ばれたまさに孤高の登山家で、健脚で当時の難ルートを次々と開拓していったスーパーマンです。加藤の真似をして、とにかく速く歩くことにこだわったり、夜のうちから歩く「かもしか行」をやったりと、実に単純に影響を受けたものです。『孤高の人』って、山を登らない人にも面白い本なんだ、と勢川さんの文章で初めて知った次第です。へんな感想かも知れませんけど。

さらに勢川さんのエントリーに対して山崎さんがコメントでお書きになっている植村直己の『青春を山に賭けて』。加藤文太郎が過去の伝説だとすれば、植村直己は生きた伝説でした。世界初の5大大陸最高峰登頂を成し遂げた植村さんの、グリーンランド犬ぞり行以前の半生を綴った『青春を山に賭けて』は、その素朴でまっすぐな人柄、目的のためにはすべてをなげうって邁進する青春の力に感動します。いや、今読んだらどう思うか分かりませんが、高校生の頃は純粋に影響を受けました。

我が家には植村さんにサインをしてもらった同書があります。北極圏犬ぞり行後の講演会でサインをもらい、植村さんと握手をして、今から考えるとなんだかおかしいのですけど「これからも頑張ってください」と口走ったのを覚えています。自らの信じた道に賭ける人の言葉は時代を超え、年齢を超えて訴えかけるはずです。



青春を山に賭けて (文春文庫)

青春を山に賭けて (文春文庫)