いずれにせよ終わりつつある産業という認識

書籍出版を文化の営みとしてではなく、もっぱらビジネスとして考えると、雑誌を合わせてもせいぜい売上規模で2兆円にいくとかいかないとかといったレベルだ。大きな企業ならば、1社か2社で稼ぐぐらいの規模だから、産業としてはとても小さい。いま、マスメディアや産業界が大いに注目する電子書籍に乗っかって、さまざまなプラットフォームやサービスが噴出してきたが、その2兆円弱のごく一部をお裾分けしてもらう程度の商売に終わるならば、けっきょくそんなにうまみはない。それに出版自体がITサービスのおまけになってしまい、成熟産業に引導を渡すことになれば(どうしたって茹でガエル状態はますますもって進むだろう)、日本のGDPはまたちっとだけ下がりましたという話で終わってしまうかもしれない。

でも、もし新しい試みによって市場自体が膨らむのであれば話は別。そういうことを考えないと、小さな陣取り合戦をしていてもいろんな意味で埒があかない感じがする。茂木健一郎さんが、彼のブログでことあるごとに海外に向けた情報発信をけしかけているが、それは具体的で重要なビジョンの一つだと思う。そういう類の思考のジャンプが必要だと、地べたを這うような仕事をしながら、頭のどこかで思ったりもする。