小野さん、がんばれ

小野さんちのお子さんが幼稚園に行きたがらないらしい。情報はそれだけ。さて、どうする? と考える時に人生の岐路が目の前に現れる。子供にとっても親にとってもそうで、気がつくと自分のことだけを考えていればよかった時期は過去のものになっているのを知ることになる。我が家の場合、いちばん下が大学生になり、別のきつさは出てきても、子供のことで屈託する時期はほとんど終わってしまったが、いま思い出しても子供で悩むのは嫌なものだ。お子さんのことで頑張っているすべてのお父さん、お母さんに幸がありますよう。

僕は子供に強権的にあたるダメ親父だったので、えらそうなことは何一つ言えない。まあ、それ故にというか、そのダメさ加減から学んだことが少しはあるような気もするので、小さな声で言うとすると、小野さんがブログで使っている「ズル休み」という言葉は少し気になるな。

お腹が痛くないのに「お腹が痛い!」と言って休むのは、たしかに「ズル休み」かもしれない。これは幼稚園生でも、会社員でもそう。でも、会社に行きたくない理由が他にあって休むのに「お腹が痛いので」というから「ズル休み」なのであって、本当の理由を盾に休みを取るのであれば、それは「ズル休み」ではないぞ、と僕は思う。「今日は気分が乗らないから」でも、まったくかまわない。「気分」は社会に通底する大きな問題だと僕は思っているので、気分の乗らないときに休むのは、その個人にとっても、長い目で見れば会社にとっても重要で意味があることかもしれないのだ。

ただ、そうした「気分が乗らない」状況が毎年・毎月・毎週起こって、それが周囲の期待を毀損したり、迷惑をかけたりとなっては困ってしまう。もしそうなってしまったら、お互いが問題を認識したうえでの対策がどうしても必要になる。場合によっては、その人とは仕事は続けられないかもしれない。だから「気分」の先にかすんでいるもっとはっきりとした理由をつきとめて対処することは重要だ。きちんとした言葉を持っている大人が相手なら、それは比較的容易な作業だろう。でも、相手が幼児だとそうはいかない。

僕は自分自身が幼稚園に行くのが怖くて、嫌で仕方がなかった幼児だった。同時に、言葉が分からずにフラストレーションをためる小学生の子供を無理矢理にアメリカの現地校に通わせた親でもあった。だから、小野さんの直面している状況を昔の自分の状況に置き換えて、自分なりの問題としてシミュレーションしてみることは出来るような気がする。

たぶん「ズル休み」には理由があるはずなので、その理由を推測することが重要だ。本人に「言葉」がなければ、本人を最も知る親御さんの観察が言うまでもなくクリティカルになる。観察をするためには幼稚園にとどまって対象を見続けなければならないだろうから、親御さんはたいへんだ。でも、幼稚園に事情を説明し、依頼をして、それはおそらくしないといけない。先生との話で貴重な情報を得られればその必要はないが、それが出来るかどうか。

たぶん、幼稚園の中に恐怖の根源が住んでいる。出来ることならば、その「やみくろ」のような存在とうまく向き合って、それを乗り越えるようにする手助けが出来れば最高だ。僕の場合、要は他人に対して主張するということが出来ない子供だったので、エゴの固まりのような幼稚園の子供らと向き合うことそれ自体がフラストレーションであり、恐怖であった。主張が出来ないというのは、コミュニケーションの手法に関して無知だったのか、主張をしてはいけないのだという一種の禁忌意識が働いていたのか。たぶん、その両方だったと思うのだが、福岡から横浜に引っ越し、転校をしてきっかけをつかむまでは他人に喧嘩を売るような態度をとれず、苦しかったような気がする。

我が家のアメリカでの経験を言うと、うちの奥さんは子供の友達づくりに相当の努力をした。日本人の友達をつくって、そこに逃げ込む道ではなく、現地の友達をつくり、スポーツ活動に参加させ、正攻法でコミュニケーションの実績を築き上げる方法を実践していった。学校の先生とは慣れない英語で実によく情報交換をしていた。時間はかかったが、最後にはそれが奏功したと言ってよい。親も子供も内にこもらず、外との関係の中で問題を解決しようとした点はよかったのだと思う。

でも、それでもうまくいかないときはどうするか? 別に幼稚園や学校に行くことが最後の目的ではないので、いくらお休みしてもぜんぜんオッケーだと僕は思う。うちの親戚の子にもいじめにあって学校を長く休んだりした子がいるが、その子のその後の人生が学校に通わなかったことで駄目になったということはまるでない。制度は有効であるならば使えばよいし、そうでなければ、思い切って使うのをやめる勇気もまた必要だと思う。人の心に関係する問題を乗り越えるのには、いずれにせよ時間がかかる。数年がかりでことにあたるのが当たり前だ、と割り切る必要があるからやっぱり大変だ。
小野さん、がんばれ。^^