SNSとインターネットのウィーン

こんな話はいつも海外旅行や海外出張にお出かけの方にとっては、あまりに当たり前の話で、今頃何言ってんのってなもんでしょうけど、とにかくも私にとっては初めての体験で、本気でびっくりしてしまったので、日本に帰ってそのびっくり感が消えないうちに自分自身のメモとしても書いておきます。

私はこうして皆様とブログでお付き合い頂き、また家族とはLINEでつながっているのですが、そういう日常を送る者が、やはりインターネットがつながる外国に行くと、そこはかつてのような外国ではないことを今回の旅行で痛感させられたという話です。なんだぁ、そんな話か、とおっしゃる方が何人もいらっしゃると思うのですが、まさしくそんな話です。

ウィーンで地方や東京にいる子供たちと、いつもと同じようにLINEでやりとりし、我が家とも普通につながり、かつブログを書けばそれは日本で書くのと寸分違わずアップできて、☆まで頂ける。こうなると、アウェイ感ほぼゼロです。横浜の隣町のウィーンに来ています、ちょっと外国人多いですけど、みたいな感じ。これは驚くべきです。

昔を思い出します。今から35年前。大学生の私はバックパックを背負って生まれて初めての海外旅行の最中にウィーンに来たのでした。そこは日本から遠い、遠い外国で、たとえ飛行機でやってきたとしても、永井荷風がフランスで味わったアウェイ感、夏目漱石がロンドンで味わったアウェイ感はかくやと思いたくなる心細さを20歳の一人旅は体験させてくれたのでした。思えば遠くへきたもんだってなもんです。日本は、我が家ははるか遠く、ドイツ語も英語も片言しか話せず、土地の風習やマナーもよく分からず、着いた数日は悲しくなったものです。

ところがどうでしょう。今や「さっき着いたよー」などと家族に連絡し、ブログを書くと近藤さんからウィーンの新情報がたちどころに入り、日本のニュースだってリアルタイム。寂寥感ゼロです。親切な音楽仲間からは翌日のウィーンフィルのチケット情報をもらい、分からないことがあれば、ウェブを開けばなーんでも分かっちゃう。困ることほぼゼロです。

ほんとに世の中変わっちゃったんだなって思いました。でも、ほんとの一人になって、困っても誰も助けてくれない一人旅は懐かしい。あれはシューベルトの『美しい水車小屋の娘』に出てくる主人公のように、『冬の旅』の主人公のように、若者を鍛える稀有の時間だったと思います。インターネットが自由につながる海外の都市よりは、携帯の電波が届かない日本の山中の方が今や我が家より遠いのです。間違いなく。

いやはや。百回驚いたって足りないぐらいです。