褒める文化

このブログがご縁で知己を得たHASHIこと写真家の橋村奉臣さんと久しぶりにお会いして話をすることができた。ニューヨーク在住のHASHIさんが、撮影のために日本に滞在する忙しい時間の合間を割いてくれたのだ。


いろいろと楽しい話をした中で僕にとって“望外の幸せ”だったのは、このブログと平行してつくっている写真ブログ『横浜逍遙亭・写真帳』の写真をHASHIさんにお褒めいただいたことだ。HASHIさんには写真を撮っていることなどひと言も話していなかったので、正直なところ、僕の写真ブログを知って見てくれていたこと自体に驚いた。ましてや東京都写真美術館で個展を開く一流の写真家に盛大なお褒めの言葉をいただくなぞ思いもよらぬことだったので、内心「うわっ」とひっくりかえりそうになり、正直に喜んだ。やはり、我ながらかなり単純である。


HASHIさんが素人の僕を褒めてくれるその仕方は、アメリカだなあと思う。アメリカで幼稚園から小学生までを過ごした三人の子どもたちが、いまだに「もう一度アメリカに住みたい」と言うのも、ことあるごとに「great!」「gorgeous!」「wonderful!」と先生や近隣の人々が日常的にかけてくれた励ましの言葉、そうやって信頼を前向きに形成しあう文化への憧憬がどこかにあるからなのではないかと思う。そうした空気があちらには濃く、こちらでは薄い。まったくないとは言わないけれど、そもそも人に声をかける、挨拶をするということすら、僕の周りでは希薄になってしまっているように感じながら生活をしているわけで、褒める、褒められるなんて、悲しいかな遠い彼方の出来事に近い。


ときどき考えるのは、赤の他人とコミュニケーションを採る機会が多い文化を持つ土地は、それだけで素晴らしいのではないかということだ。まったく知らない人と触れ合うことで互いが豊かさを交換するチャンスを得る。“褒める”ということは、そうしたコミュニケーションを促進する潤滑剤だし、同時にコミュニケーションの中で得られる最高のご褒美でもある。


自分がブログを続けることの価値も、けっきょくその辺りに核があるのではないかと最近は思う。インターネットは僕にとっての“褒めあう土地”なのだ。というわけで「はてなスター」にもあらためて賛同の一票を。


■橋村奉臣さんのサイト