一瞬の永遠

HASHIさんとHASHI展のことはとりあえず気が済むまで文字にしたので、一昨日、10月28日(土)に行われたブログの仲間の不思議な集まりについて少しだけ書いておく。しかし、これから書くものはあくまで刺身のつま、副菜。主菜はぜひ『三上のブログ』で味わっていただければ幸いです。


のっけからこんなことを言うのはなんだが、美術展だの音楽会だのに他人と行くのは好きではない。誰かが退屈してしまえば気詰まりだし、自分が対象に没入してしまえば相手をないがしろにしてしまうかもしれない。仲の善し悪しは関係なく、作品に対峙するのに自分以外の誰かが横にいるのは煩わしい。それに、僕はどちらかというと、美術展はさっと見て切り上げる方だから、没入型の人と時間が合わない可能性が大きい。そんな人間からしてみると、三上さんも現地で何度もつぶやいていたように、今回みたいな集まりが起こったのは奇跡のように思えてしまう。


fuzzyさんが彼のブログで僕が今回のツアーを組織したらしいと書いていたので、それだけは訂正をお願いした。確かに「HASHI展はいいぞ、すごいぞ」と書きまくったのは間違いないが、今回の集まりの端緒はあくまでHASHIさんが三上さんに再度にわたる強烈なお誘いをなさったことに起因している。あとのことは、偶然の賜、HASHIさんの座右の銘「Life is Timing」以外の何ものでもない。僕は皆さんの参加が決まった後に裏方仕事を引き受けただけだ。


そもそもはHASHIさんの押しに覚悟を決めた三上さんが美崎さんにもお会いできないかと書いたところ、美崎さんから「自分も展覧会を見たいので」と写真美術館に足を運ぶと連絡されたところから始まる。fuzzyさんもどうですか、と声をかけたのはたしか美崎さん。そして、「どうぞ、楽しんできてください」と溜息をついていたrairakku6さんを口説き落としたのも美崎さん。なんだ、書きながら気がついたが、オーガナイザーは美崎さんじゃないか! (証拠はここのコメント欄!→)

■ブログの可能性:“pure”ということ(『三上のブログ』10月15日)


最後に三上さんがmmpoloさんにも声をかけてくれて、不思議な6名がHASHI展を目指すことになった。なんだか『未知との遭遇』みたい。


それにしても、出会った皆さんは案の定個性の強い人たちだったこと。つくづく十人十色だと思った(そういうタイトルの写真が会場にはあった)。三上さんはHASHIさんの会場内での説明ツアーは端から無視して、寄らば切るぞの気迫で作品と向かい合う。メモを片手に、まるで長考する棋士のよう。
札幌からいらした三上さん同様、わざわざ広島からこのためだけに上京したrairakku6さんは、「本物は写真とぜんぜん違います。ほんとうに綺麗で感激しました」と嘘偽らざる表情でにこにこと会場を歩き回り、とても楽しそう。
ご自身が写真のディレクションの仕事も経験している美崎さんはHASHIさんと立松和平さんの対談集、さらに9千円もするHASHIさんの写真集でしっかり予習をすませてから会場入り。HASHIさんに撮影方法を繰り返し訊ねては嫌がられ「自分で想像してください」と突き放され、結局はmmpoloさんや僕を相手にあーでもない、こーでもないと好奇心にとどまるところがない。
mmpoloさんは、あの文体そのものの飄々とした立ち姿が絵になっている。美崎さんと僕があーでもない、こーでもないをやっていると、カビに侵された果物の写真の前で、なぜ、イチゴは全部かびているのに、横にあるブルーベリーの山は一粒だけしかかびていないのか、またその隣の洋梨はなぜかびないのかをさらりと解説し、僕らを唖然とさせる。
fuzzyさんとは展覧会終了後にお会いしてご挨拶をすることになったが、一足先に会場入りしご自身のブログに向けて実況中継をされていた由。


そんな面々が展覧会終了後に場所を移しての宴の雰囲気は、やはり『三上のブログ』の素晴らしい文章でお読みください。隣に座った美崎さんが「中山さん、イメージ違うー」と突っ込むので「美崎さんだってそうだよー」と返してやった。mmpoloさんはご婦人方のいる前で、飄々と猥談を始めるし、HASHIさんのボルテージもどんどん上がる。三上さんから思いがけないカードのおみやげもあった。笑いあり、涙ありの幸せなひととき。秋の夜長、つかの間の濃厚な祝宴は「一瞬の永遠」だった。


■喜びと悲しみ:HASHI[橋村奉臣]展を訪れて1
■cheers:HASHI[橋村奉臣]展を訪れて2
■ある婦人に渡ったポストカード:HASHI[橋村奉臣]展を訪れて3
(何れも『三上のブログ』2006年10月30日)