音楽

心を統べる技術

つい先日、在京の某オーケストラでベートーヴェンを聴いた。帰りがけの電車でツイッターを除くと、最近のコンサートの常で、もういくつものツイートが当の演奏会に関して流れている。ほぼ絶賛。もちろん、終わったばかりのコンサートについて一言しゃべりた…

ブロムシュテットとN響のモーツァルト、チャイコフスキー

昨晩、ブロムシュテットとN響でモーツァルトの40番とチャイコフスキーの5番という名曲コンサートを聴いてきました。N響のアンサンブルは目を見張るというべきか、耳がそばだつというべきか、最近聴いてきた日本のいくつかのオケとはレベルがまったく異なる出…

下野竜也指揮読響のブルックナー交響曲第9番

下野竜也指揮の読売日本交響楽団でハイドンの交響曲第9番とブルックナー交響曲第9番を聴いてきた(9月9日、サントリーホール)。9月9日に2つの9番という洒落なのだそうだ。1年半前に同じコンビで聴いたブルックナーの5番がたいへんに素晴らしく、その印象…

東京でのコンサート通い

敬愛する音楽評論家、吉田秀和は一流にしか興味がない人だった。吉田さんはコンサートや録音の時評も好んでやったが、日本の音楽家はほとんどその対象には上らなかった。どこかが突き抜けている人、突き抜けようとしている演奏しか相手にしようとせず、その…

ノット指揮東京交響楽団のマーラー交響曲第9番

昨日は東京交響楽団が新しい音楽監督であるジョナサン・ノットを迎えてのお披露目コンサートに行ってきた(4月20日/サントリーホール)。ノットっていい指揮者だと思った。聴くのは録音を含めて初めて。振りも出てくる音楽も、実にくっきりとしているが、分…

スダーン指揮東京交響楽団のブルックナー交響曲第4番

一週間前にユベール・スダーン指揮東京交響楽団でシベリウスのバイオリン協奏曲とブルックナーの交響曲第4番を聴いた。場所はミューザ川崎シンフォニーホール(11月3日)。コンサートホールの話から切り出すのは音楽会の話題としてどうなんだろうという気が…

飯森範親指揮山形交響楽団のブルックナー交響曲第1番

前日のブラームスで抱え込んだ、なんとももどかしい気持ちを解消してくれた演奏会。ブルックナーの1番が演奏会で取り上げられること自体が比較的珍しいのに、この日はさらに珍しいウィーン稿での演奏。ウィーン稿は最初の稿から四半世紀のち、8番を書いた直…

東京交響楽団でブラームスの交響曲第4番を聴く

昨日のエントリーの中で今日の東京交響楽団のコンサートの感想を書くと宣言してしまったので書き留めておくが、先回りして言ってしまうと、今日の演奏会に対する個人的な感想は残念ながらいまひとつだった。昨年、一昨年とブルックナーを何度か聴いてとても…

劣化する記憶力について

またしばらくブログから遠ざかっていたが、この9月は3回の音楽会に行った。どれもそれぞれに楽しめた。素晴らしいコンサートだった。と書いておいて、困ったことに実際の演奏をよく覚えていない、ということが今日のトピック。例えば、カンブルランが振った…

初めての水戸室内管弦楽団

昨晩、水戸室内管弦楽団の東京公演を聴いた(7月8日、サントリーホール)。冒頭、先ごろ亡くなったバイオリニストの潮田益子さんを偲んで当初のプログラムにはなかったモーツァルトのディベルティメント(K.136)の第2楽章が演奏された。通例にはないことだが…

飯森範親指揮山形交響楽団による「さくらんぼコンサート2013」

山形交響楽団による「さくらんぼコンサート2013 −アマデウスへの旅」と題するコンサートを聴いてきた。場所はタケミツホール(2013年6月27日)。楽しいという言葉がぴったりのコンサートだった。開演前の狭いロビーはミニ山形物産展の様相を呈していた。さく…

ハーディング指揮新日フィルのシューマン交響曲第3番

6月28日のサントリーホール。シベリウスの5番の交響曲、ヴィトマンの『トイフェル・アモール』という現代音楽の大曲のあと、この日のエンディングに演奏されたのはシューマンの3番『ライン』だった。20世紀の初頭に書かれたシベリウス、21世紀の初頭に書かれ…

ハーディングと新日フィルによるイェルク・ヴィトマンの『トイフェル・アモール』

ハーディングと新日フィルによる6月28日のコンサートでシベリウスとシューマンの交響曲にサンドイッチされて演奏されたのはイェルク・ヴィトマンの『トイフェル・アモール − シラーによる交響的頌歌』という昨年出来上がったばかりの大作。本邦初演である。…

ハーディング指揮新日フィルのシベリウス交響曲第5番

ダニエル・ハーディング指揮の新日本フィルハーモニー管弦楽団でシベリウスの交響曲第5番を聴いた(2013年6月28日、サントリーホール)。シベリウスの5番は何度か実演で聴き、ディスクで聴いたものを含めると様々な演奏を体験したが、ハーディングと新日の演…

久しぶりの連チャン音楽会

今日は音楽友達のKさんからチケットを譲って頂き、新日フィルのコンサートへ。2日続けて音楽会に出かけるのはいったいいつ以来かというぐらい久しぶり。体力が歳相応になくなっているので、ホールの椅子に座っているだけなのに「あぁ、疲れた」とため息が出…

さくらんぼコンサート2013

初めて聴いた山形交響楽団のコンサート、とても楽しかったですよ。橋本杏奈さんっていうクラリネット奏者知ってますか? 僕は初めて聴いたけど素晴らしかった。感想はまたあらためて。

ミューザ再開コンサートのブルックナー交響曲第9番

4月に聴いたミューザ川崎のリニューアルオープニング・コンサートを再びテレビで鑑賞中。うちのテレビだと、せいぜいメロディラインと高音あるいは強奏の楽器がキンキン聴こえるだけなので、ただでさえスッキリ・クッキリな演奏に残念ながら余韻のかけらもな…

腰痛からの帰還

腰を痛めてルーチンの日常生活から少々離脱しただけなのに、なかなか元に戻るのが容易ではないと感じるのは自分が気がつかいないうちに体が老いている証拠のようなものだろう。足を動かすと、左足に緩慢なしびれがやってくる。だから、椅子に座り続けるのは…

テミルカーノフ指揮読響のショスタコーヴィチ、ドボルザーク

木曜日から腰を痛め、2日間続けて勤めを休む。2日も病休をとるのは自分自身でも珍しいこと。寝ても痛く、座っても痛い。立っているのがむしろ楽なのだが、とは言え、やはり立っているのはほんとに楽かと言うと、それも限界がある。腰の痛いのは厄介至極だ。…

「さよなら、フルビー君」

カール・フルビー著『アントン・ブルックナーの思い出』から、交響曲第9番と『テ・デウム』に関するくだりを見つけてそこだけ文字にしてみる。ブルックナーのお弟子さんだった著者が、ブルックナーから9番が完成しなかった時には『テ・デウム』を終楽章とし…

ブルックナーとドイツ文字

ちょうどひと月ほど前になるが、ブルックナーの交響曲第9番と『テ・デウム』を続けて演奏するコンサートを聴いた。その際に、9番とはまったく性格が異なる『テ・デウム』を未完成の第4楽章の代わりに演奏してほしいと言ったというブルックナーの心持ちに思い…

横浜フィルハーモニー管弦楽団第69回定期演奏会

ゴールデンウィークの前半は家の用事を済ませたり、家族で食事に出たりとゆっくり過ごし、今日はアマオケ鑑賞。横浜フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会を聴きにみなとみらいホールに出かけてきた。今日座った席は前から7列目とかなり前の席。普段は安いチ…

ブルックナー交響曲第3番は実にマゼールに合った曲だと思う

ブルックナーを初めて聴いたのはマタチッチがN響を振ったライブのFM放送だった。1970年代半ばのことだ。聴いたのは交響曲第8番。モーツァルトやベートーヴェン、ブラームスが交響曲としか思っていない耳にはまるで前衛音楽に聴こえた。あとで考えると、その…

マゼールとミュンヘン・フィルの愉悦

マゼールは意識的に追いかけた音楽家ではないので、彼とミュンヘン・フィルがいつから一緒に仕事をしているのかはまったく知らない。音楽会当日のプログラムを買えばその辺りの事実関係については記述があったかもしれないが、外来演奏家のコンサートでお金…

マゼール指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団のブルックナー交響曲第3番

ロリン・マゼールが指揮するミュンヘン・フィルでブルックナー交響曲第3番を聴いた。プログラムの前半はタンホイザー序曲とヴェヌスベルクの音楽、トリスタンとイゾルデよりイゾルデの愛の死の2曲。プログラムの質と量を考えると思いがけないことだったが、…

なぜ『テ・デウム』なのだろう?

世を去る間際、ブルックナーはなぜ『テ・デウム』を交響曲第9番の未完の第4楽章の代わりに指名したのだろう?スダーン指揮東京交響楽団によるミューザ川崎再開記念コンサートで、ブルックナーの交響曲第9番と『テ・デウム』が続けて演奏されるのを初めて聴い…

こだわりはよいか、わるいか?

昨日の演奏会の感想文は、自分自身に対してある種の規制が働いた。「おめでたいミューザ川崎のリニューアル記念演奏会なのだから、あまりひねくれた文章を書くのはやめよう」というスイッチが何気なく作動してしまったという意味である。ほんというと、昨日…

スダーン指揮東京交響楽団のブルックナー交響曲第9番、そして『テ・デウム』

東日本大震災でホールにぶらさがるつり天井が客席に落下し、世間の耳目を集めたミューザ川崎が地震後の修復工事を終えて2年ぶりに再開した。今日はそのリオープニング・コンサートに出かけてきた。曲目はブルックナーの交響曲第9番と『テ・デウム』。出演は…

初めての読響

2月に1度、3月に1度、サントリーホールでオーケストラのコンサートを聴いた。今年のコンサート通いの最初は2月18日に下野竜也指揮の読売日本交響楽団でブルックナー交響曲第5番一曲というプログラム。これはとてもよいコンサートだった。めぐり合わせという…

スダーン指揮東京交響楽団のブルックナー交響曲第6番

スダーンと東京交響楽団によるブルックナーを聴くのは2度めのことだが、前回同様、申し分のない演奏で、心から楽しんだ(12月2日、サントリーホール)。第1楽章のテンポ設定、3楽章と4楽章のバランスなど、指揮者の解釈がモノを言う曲であり、ブルックナーの…