昨晩のNHK特集で「すきやばし次郎」の小野二郎さんの番組をやっているのを観た。「寿司の神様」であるところの二郎さんと、「天ぷらの神様」と呼ばれているという天ぷら職人の早乙女さんとの友情と職人魂を描いた番組だった。
91歳になって、その分野の頂点に立ち続ける二郎さんは、間違いなく怪物である。異常な執念の人である。体調を崩しながらも握り続ける仕事への執念は、仕事をしている最中に死にたいと本人に言わしめる。70歳を過ぎた早乙女さんも二郎さんを超えることを目標に日々技を磨いているというお話。
おそらく年若い制作者が、仕事でキャリアを築いている最中、築こうとし始めている年代の視聴者を念頭に置いてつくった番組ではないかと思う。とてもきれいな内容で、一流の職人の仕事にかける尋常ならざる執念がくっきりと描かれていた。これを観て、職業人としてのプライドを刺激され、背中を押される人たちは多いはずだ。「頑張る」ことの素晴らしさを肯定するよい番組だった。
しかし、職業人として向上する時期が終わってしまった者、頑張ろうにも頑張れない者にとって、そこで描かれていた倫理や価値観は自分のものではない。まるで別世界の話だ。そうした「我々」にとって、よりよく、心豊かに生きる糧とはなんなのだろう。などとぼんやり考える。