シモーネ・ヤング+東京交響楽団のドヴォルザークとブラームス

欧州ツアーから戻ってきた東京交響楽団のコンサートに行ってきた。シモーネ・ヤングの指揮でドヴォルザークのチェロ協奏曲とブラームス交響曲第4番のプログラムである(2016年11月3日、ミューザ川崎)。

シモーネ・ヤングさんは、女性指揮者としては今いちばん名を知られている人だろう。竹を割ったような直線的な解釈をする演奏を、いくつかの録音で聴いたことがあり、こういう曲目は合わないんじゃないかとネガティブな先入観を抱きながら行ってみたら、これがなかなか面白い演奏会だった。

ドヴォルザークの協奏曲は、予想通りの直線的演奏。メリハリが過度にはっきりして、山を作るところはしっかりオケを鳴らす、その潔さが気持ちいいが、この曲でそんなに力こぶを作らんでもという気分におそわれるパワフルさが強奏で発揮される。ソロのアリサ・ワイラースタインさんは柔らかい音とテクニックを備えた素晴らしいチェリストで、この人のおかげでヤングさんの剛毅はうまい具合に中和された感があると言ってよいか、それともソリストと指揮者の芸風の違いが気になったというべきか。

後半のブラームスは、やはり一貫してザッハリッヒな解釈だが、前半のドヴォルザークはまだ予定調和の範疇だったのが、ブラームスでは「私はこういう具体に聴かせたい」という主張がくっきりして、その自己主張が面白かった。早めのテンポの中でドラマチックな展開を目指した第一楽章がとくに。

二、三日の練習でこれだけやりたいことを伝えて、しっかりとそれを実現するのは、指揮者としてなかなかのものだと思った。いいようにいじくりまわされるオーケストラの側には、面白いと感じる演奏者と、ウザったいと感じる人とがいただろうなと想像しつつ、客席で聴いていて十分しっくりいくところまではいかなかったにせよ、初めての指揮者の意図をそれなりに体現して形にする東京交響楽団には健闘への拍手をしっかりと送らせていただいた。