例えばテントを背負って欧州の街を歩いてみたり

20歳のときに初めて海外旅行をした。忘れもしない、1980年のことだ。バックパックを背負ってヨーロッパを40日間一人旅。頑張ってアルバイトで稼いだお小遣いで安売りの航空券を買い(パンナムの南回り便だった)、滞在費も出来る限り切り詰めて日数を確保する。そのために友人に教えてもらった米国の貧乏旅行のバイブル「Let's go Europe」を丸善で買い求め、目を皿のようにして情報を収集し、西ドイツやオーストリア大使館に出かけて夏の音楽祭の情報などを狩猟した。

その時にもっともお金を絞ったのは宿。当時、安宿といえばユースホステルを使うのが常套手段だったが、山登りが趣味だった僕はキャンプ場を活用した。これは「Let's go Europe」を読んで得た情報なのだが、欧州には日本やアメリカでは考えられないことながら都市の真ん中ですらキャンプ場がある。少なくとも当時はそうだった。そこに一人用のテントを持って入ればユースホテルよりもさらに格安旅行が実現できる。そう考えて実践してみた。

40日のうち、半分ぐらいがキャンプだったのではないだろうか。大きな街では、例えばミュンヘンでも街中キャンプだった。もちろん日本人なんて一人もない。けっきょく、旅行の最中に同じことを実践している人に会ったのはインスブルックで一度だけだった。

ルールは自分で作るのが、旅行も人生でも楽しみなはずだが、日本にいるとルールってのは人の決めたことに従う以外にはありえないんだよというムードが充満していて、ほんとにつまんない。というか、はっと気がつくとそのムードに意識が汚染されてしまっている。でも、ルールは自分のために自分自身で作るのが正解のはずなんだ。自分のために、あらためてそんな風に言ってみたりする。

で、試しにミュンヘンのキャンプ場をグーグルで検索してみたのだが、いったい自分がどこに泊まったのか、まるで思い出せない。もっと街中にキャンプ場があったような気がするのだが、それらしい場所にはキャンプ場など存在していないのだ。夢でもみていたのかな。

■ミュンヘンのキャンプ場(グーグル)