世界一住みやすい都市

写真ブログで使わせてもらっているgooを見ていたら、「世界一住みやすい都市ランキング」というレポートに行き当たった。世界的に評価されている二つのコンサルティング会社がそれぞれ作った「住みやすい都市ベスト20」が紹介されている。二つのリストを眺めていると、東京の喧噪を忘れてしばし想像と思い出の世界に遊ぶことができた。

■世界一住みやすい都市ランキング(gooリサーチ)


数えてみたら、僕が一度でも訪れたことがある街が片方のリストに14、もう一方に13もあった。自分自身にそれなりのイメージがある場所が多いだけに、なるほどと思ったり、逆に意外の感に襲われたりとなかなか楽しい。

案外特定の地域に固まっているのは「住みやすさ」の尺度に一定の価値観があらかじめ反映されているからだろう。選び出された街は驚くほど欧州が目立っており、それも、ドイツや北欧などの地域が思いの外数多く選択されている。とくにドイツに関しては、片方のリストでフランクフルト、ベルリン、ハンブルク、もう一方にはデュッセルドルフ、フランクフルト、ミュンヘン、ベルリンが選ばれており、抜群に評価が高い。ドイツ語圏という意味では、ウィーン、ベルン、チューリッヒなどもあるから、このリストを見ているとドイツ語圏が今の世でもっとも住みやすいように思えてくる。一方、地域同じ欧州でも南欧はまったく選ばれていないのが不思議な感じがする。ローマも、フレンチェも、マドリードも、リスボンも、ここにはない。都市インフラの整備度合いが尺度になると、鉄とコンクリートに覆われた地域がどうしてもリストの上に来るらしい。ある種の人情の存在や、人々の醸し出す雰囲気や、感覚に訴える風景は、ここでは判定の埒外におかれてしまっている。

ここには東京と大阪・神戸を例外としてアジアもアフリカも存在していないし、まったく想像していなかったのだが、アメリカ合衆国からもランクインしている場所が一つもない。北米では、バンクーバートロント、オタワ、モントリオールカルガリーなどのカナダ勢がドイツと並んで幅をきかせているのに、ニューヨークも、サンフランシスコも、シカゴも、ボストンも、シアトルもないのである。

このエントリーには合理的な落ちはまったく用意されていない。強いて言えば、人の体験の数だけ、この世には住みやすい街、住みにくい街があるとでも言っておくしかない。しかし、僕個人にとっては、記憶の明滅を呼び起こすリストである。あちこちの街角に、ごく個人的な小さな体験が塵のように積もっているのが見える。都市の名前を見ていると、眠っていた記憶がかすかに明滅する。言葉というのは、活字というのは、なんと不思議な存在だろう。