「偶然だぞ」でちょっと遊んだ

シカゴ・カブスの開幕戦で、福留孝介を応援する「偶然だぞ」のプラカードが球場で揺れる映像をご覧になっただろうか? いったい何がどうしたのかとびっくりしたやらおかしいやら。いちおう、野球に興味のない方にも何の話をしているのかをお伝えしておくと、中日ドラゴンズからカブスに移籍した日本でも指折りの外野手、福留選手の地元ファンへのお目見えのホーム初戦で、「偶然だぞ」というプラカードを手にした観客がたくさんいたのである。それがしばしばテレビに映る。福留がバッターボックスに入ると、大歓声が起こり、「偶然だぞ」のプラカードがあちこちで堂々と頭上に掲げられる!

間違いなく日本語を知らないアメリカ人の誤訳であることは推測できたが、後でそれが「It's gonna happen!」の誤訳だと知ったときには「なんでそーなるの」とさらにびっくり。さらに、それがグーグルの翻訳サービスによる誤訳の結果だと知ってますますびっくり。やってみたら、ほんとうにそうなるのだ。ご興味のある方、どうかグーグルに行って「It's gonna happen」と打ってみてください。

http://translate.google.com/translate_t?hl=ja

どういう風の吹き回しでそうなるのか。自動翻訳は数年前に試してみて、家族で涙を浮かべて大笑いをした経験があり、それ以来馬鹿にして(というか、内心安心して)、見向きもしていなかったのだが、それにしてもこれは面白すぎる。試しに他のプロバイダーのサービスで「It's gonna happen」とやってみた。結果は次の通り。

Yahoo:  It's gonna happen! → それは起こりそうです。
excite:  It's gonna happen! → それは起こりそうです。
Infoseek: It's gonna happen! → それは起こりそうです。
Nifty:  It's gonna happen! → それは起こるでしょう。

ごくまともである。グーグルのようなエンターテイメント路線を行く事業者はいないではないか。それにしても、この「偶然だぞ」系の翻訳サービスを使って外国人とコミュニケーションをとったらどうなるだろう。筒井康隆のナンセンス小説みたいな事態が出現するのではないだろうか。

自分だったら何と訳すだろうと考えみたが、うまい日本語が出てこない。「来るぞっ」ぐらいでどうだろう? ウェブを徘徊してみてみたら、「なにかが起きる」と訳している記事があって、これは少しやり過ぎだけどうまいなあ、日本語としてきれいだなあと思った。別の記事では「優勝するぞ」というのもあった。「It」を何と読むかがミソになるが、これは漠然として言葉になっていない素敵なことが起きるという感じじゃないかと思う。「優勝」は意味を辿るとたしかにそこまでいくが、ちょっとストレートすぎておもしろみがない。やはり「何かが起きる」はイイ感じかもしれない。大学の英文科にいる息子に「なんて訳す?」と訊いてみたら「きっとおきる!」ときた。なるほど。

このブログの常連の皆さんには日本語が達者な上に英語の仕事をしている方、英語で仕事をしてきた方、英語を日常的に使っている方などなどがたくさんいるので、どんな風に訳されるか聞いてみたい気がする。