『私塾のすすめ』ってどこが面白いんですか?

先月だかの金城さん(id:simpleA)の「わいわい」の席で、誰からだったか「『私塾のすすめ』ってどこが面白いんですか?」と尋ねられた。そのときにはすでにエビスビール2パイントを飲み、酔っぱらい方面に移行途中だったので、「うーん」とかなんとか言ったきりで、情けないことに何も答えられなかった。そこで、そのことに関して一言。

さまざまな情報の流れをリアルタイムで広く見渡せる時代が到来し、あらゆる分野で一人の勝者と数え切れない敗者が誕生する時代が到来したのが今の世の中。例えば、美術作品に関しmmpoloさん(id:mmpolo)は一握りの人気作家の作品ばかりが値上がりする現象を何度か話題にしているが、投機的な性格がそもそも強く、主観がものを言うアートの世界とインターネット・エコノミーが結びついた先に起こった現象ということだろう。アートだけでなく、さまざまな領域で、似たような状況が生まれている。そんな世の中で、かつて日本人が共有していた「皆が中流」という幻想をなくしてしまった世の中で、どうすれば幸せに、あるいは心安らかに暮らしていけるのか。おそらく、これから社会全体で問い続けていかなければならない大きなテーマの一つがそれだ。

では、個人としてどんな風に対応すべきか。極端に言うと、考え方は二つに割れる。


・「俺も勝ち組に入るぞ」とひたすら上を見上げる。その昂揚を保ち続ける。
・「人生お金じゃない」「人生経済的成功がすべてではない」と悟りを開く。経済的成功だけに満足を求めるのではない静かな価値観を身につける。


誇張して言えば、前者は二十歳(前)の価値観であり、後者は定年退職者の価値観ということになる。こうした両極端の間に人それぞれの境遇、ライフステージ、人生観に見合った回答があるのだとは思うが、『私塾のすすめ』が語るライフスタイル、要は金になるならないという尺度をいったん忘れたうえで、自分のために学び続ける、皆で学び続けるということを人生の目的に据えた生活を意識することはひとつの重要な回答なのではないか。と、まあそんな風に思いましたとさ。来週打ち上げがある金城さんの共同翻訳の試みは、その具体的な実践だ。いつもながら、彼のセンスと行動力には感服するばかり。

その際に重要なマインドは中村孝一郎さん(id:koichiro516)が提唱する「微分値で生きる」。これで決まり。言葉は人に勇気を与えてくれる。