池田信夫blogの『ウェブ時代をゆく』批判を読んで

梅田さんのサイトからリンクをたどり、『ウェブ時代をゆく』にも登場する小飼弾さんのブログを経由して池田信夫さんのブログ(たまに目にしている)に到達した。そこで強烈な梅田批判の一文を読んだ。

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/c3fd47bcbacc477d63e978c9ad7f04ce

こんな本は15分で読めちゃうよ、内容ないんだから、という書き方はちょっと品がなさ過ぎると思うね。議論をふっかけるときにはこれぐらいの調子でやるもんだよという主張の表れかもしれないが、なんかちょっと子供っぽすぎないかね、その姿勢。

池田信夫は『ウェブ時代をゆく』を梅田望夫ベンチャー論、IT産業論だと受け取って批判をしている。故意か、他意がないのかはさておき、それでは本の趣旨を取り違えている。実際、同書の219ページには「スモールビジネスとベンチャー」という小見出しがあり、「しかし、広く一般に、ウェブ進化と新しい職業の関係全体を考えるなら、ベンチャー起業は例外的でとても特殊なことだととらえておくといい」というフレーズ、あるいは「誰もがベンチャーの創業や経営を目指す必要などどこにもない」というフレーズに、アメリカでファンドの経営者としてスモールビジネスを実践している梅田の立場ははっきりと示されている。これに先んじて、「ベンチャーとスモールビジネスは違う」という説明が出てくるのは本書の前半第2章なのだが、この二つの用語に関する簡潔な解説は僕のような経営に無縁の者にはとても新鮮だった。せめて1時間かけてこの本を読めば、ベンチャーの話をもってして本書の批判をすることはなかっただろうに。

やっぱり15分で新書を一冊読むのはちょっと無理があるんじゃないだろうか。というのは、皮肉が過ぎるとすれば、池田さんぐらい名の知れている人が批判をするならば、それ相応の真摯さをみせてもらいたかった。

池田さんの文章の前半には、そもそもIT業界にいる若者に「自分を信じろ」といっても、日本のIT業界の状況を見れば、そんなの戯言だという趣旨の記述がある。これも『ウェブ時代をゆく』の読者がIT業界にいる人々だという前提を置いているが故に出てくる発言だ。ただ、現在の梅田さんは、IT業界のみんな頑張れという言い方をしているわけでは必ずしもなく、もっと広い層に向かってメッセージを送りたがっている。これは一読して明らかだ。本書に対する批判があるとすれば、著者のこのスタンスを認めたところから出発しなければならないと思う。僕個人としての、本書に対する最も大きな興味はその部分にある。