真夜中の散歩

昨晩は杉本幸太郎さんと久しぶりに会い、人形町焼鳥屋に沈殿しておしゃべりをした。今年の2月以来だ。杉本さんは僕の前の勤め先で同僚だった人だが、クリエイティブと調査分析という異なるフィールドのノウハウを持ち寄り企業に対してコンサルティングを行う会社「アウトロジック」を2年前に設立し、順調に実績を作っている。独立する前にはビジネス領域の情報を発信するブログ『FPN (Ftuture Planning Network)』を立ち上げて人気サイトに育てたことでも知られている。

杉本さんとの会話には、彼の言葉、さらには僕自身が語っている言葉が、自分自身の心の深淵の中に静かに落ちていくような、不思議な感慨を覚える瞬間がある。昨日もまた、僕にとってはそんな思いが幾重にも積み重なる貴重な時間だった。たった二人の小さなシュンポシオンである。

このブログをお読み頂いている方の関心領域の範囲で言えば、梅田望夫さんの『ウェブ時代をゆく』をめぐってかなり深い意見の交換をした。HASHIさんとの会話同様、ご本人から了解をもらっている訳ではないので、残念ながらこの場でその内容をご紹介はできない。ただ、自分の会社を作って3年目を迎える杉本さんの言葉を聞いていると、その読みには、僕にはちょっと届くことができないスモールビジネスを動かし始めた彼ならではの理解、著者と読者との間の微妙だが深い共鳴のようなものがまざまざと感じられ、内心たじたじとなった。

生ビールとおいしい焼酎で断然いい気持ちになり、東京駅から東海道線に乗車。どうやら、そのとたんに前後不覚に陥ったらしく、気がつくと降りるべき駅から3駅過ぎた辻堂のアナウンスが鳴り響いている。まだもうろうとした頭のままホームに降り立ち、時刻表を見ると上りの終電は30分前に終わっていた。夜中の12時を過ぎている。やれやれである。乗り過ごしなんて、この十年方やったことがない。

駅前でタクシーを掴まえようと思ったが、改札を出たとたん「よし、歩こう!」と元気な自我が酔いと楽しい会話の木霊のなかで突如いきり立ち、そのまま線路沿いを歩き始めた。と書くと何事かをしているようにも読めるが、要は単なる酔っぱらいである。さすがに二駅目の大船に着く頃には焼酎の酔いは十分に覚めて寒さが身に染みはじめた。およそ9キロ、ブルックナーの4番、5番を立て続けに盛大に鳴らしながらの真夜中の散歩をそこで切り上げ、タクシーの運転手さんとおしゃべりをしながら帰宅したのは午前2時15分だった。

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

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