NRIによると学歴肯定派が増えているらしい

昨日、都内で開かれたビジネス系のイベントで野村総合研究所の藤沼社長の講演を聞いた。その前半で同社が継続的に実施している「生活者1万人アンケート調査」の結果が報告され、その内容が面白かった。藤沼さんの話の落としどころは消費の二極化が進行しているという見解で、2000年頃には安さを重視する傾向が顕著に現れていたのに対し、最近は「高くても納得できるよいものを」という人がその頃に比べてかなり増えているという。これにともなって生活のための情報収集や活用のスタイルも少数のイノベーターと多数のフォロワーに分化しているのではないか、というのが野村総研の仮説のようだ。


この話の前段として紹介されたのが、人の意識は保守化しているという分析結果である。たいていの方はそう聞かされても驚かないというか、「やはりそうだろうな」と思うはずだが、学歴志向が復活しているという具体的な話には僕自身は耳がそばだった。「有名な大学や学校に通った方が、将来は有利になると思う」という問に「そう思う」と肯定する回答をした人の比率が2000年には47%だったのが、2003年には49%、最新の2006年の調査結果では55%へと上昇しているというのだ。なんといっても1万人の調査結果なので、サンプリングがちゃんとしていれば1%、2%の差は有意であり、ここでの8%アップは相当の意識の変化があることを意味する数字である。


会場では最新の2006年の調査結果を年代別に紹介してくれていたが、それによると、学歴肯定派が多いのが40代(63.1%)、10代(62.5%)、低めなのが20代(52.7%)、30代(52.2%)と世代の差が明確に現れている。現役の受験世代である10代、受験世代の親御さんが多い40代で「やっぱり学歴だよ」というあからさまな傾向が出ているのだ。我が家にも当の受験生を含めてこれから受験の子どもが二人いるので、彼らの周囲の様子をそれとなく耳にする限り、この調査結果はある程度的を射るものになっているように感じられる。大手企業の景気回復、新卒採用の増加などの短期的な傾向が、取られる側の意識に刹那的な大企業志向を復活させていることも間違いないだろう。一方で就職氷河期を体験した世代でこうした数字が低いのは、怨嗟の声に似たものが聞こえるような気がしないではない。


減ったとはいえ、4割はいる「有名な大学や学校に通った方が、将来は有利になると思」わない(+分からない)と回答した人たちが、どんな世界観を描いているかに個人的には感心がある。とくに10代の人たちおいて。「思わない」人の中には案外「「有名な大学や学校」って東大とか京大のことだろう。せめてハーバードのMBAは出ないと」と考えている本物のエリート志向が混じっているかもしれない。昔ながらの「北海道で牧場をやって」といった素朴派も混じっているかも知れない。僕は「そんなこと聞かれたってよく分からないよ」と考える人たちが増加しているのではないかと想像しており、日本の未来はまるで楽観視できないと勝手に心配している。ほんとはその辺りの意識の変容がもっとも興味深いトピックだ。


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