吉本隆明が栗本慎一郎と『相対幻論』を出したときは、なんとやわらかいものを出したものだとびっくりしたし、80年代の『マス・イメージ論』や『ハイ・イメージ論』のときも読んで俺が理解できるような文体で吉本が書いてらあと思ったものですが、そんな吉本さんの本もお年を召してインタビューを文字にしたようなものばかりになってしまいました。正直なところ昔の文体が懐かしい。それでも、こうやって使命感に突き動かされるように著書を出し続けることに脱帽です。
- 作者: 吉本隆明
- 出版社/メーカー: 講談社インターナショナル
- 発売日: 2007/04/01
- メディア: 単行本
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詩人・吉本隆明のスタイリッシュな造語はもう読めないが、いまこのようにして吉本さんが発言をしているということを確認したくて、財布と相談しながらもまた読む。吉本さんの新刊を買うという行為もいつか思い出になる。
今回はこんな言葉に出会えました。
文句なしにいい作品というのは、そこに表現されている心の動きや人間関係というのが、俺だけにしか分からない、と読者に思わせる作品です。この人の書く、こういうことは俺だけにしかわからない、と思わせたら、それは第一級の作家だと思います。とてもシンプルな見分け方と言ってよいでしょう。
(吉本隆明『真贋』(p65))
この人は何十年か言い張り続け、何世代にもわたってあまたの日本人に影響を及ぼしてきた。単純にすごいと思います。また、最近の吉本本の一冊ですし、また薄まっている感はありますが、それでも吉本さんの気力が伝わってきます。一読をお勧めします。