水窪で富士川りんちゃんに連れて行ってもらったお菓子屋さん、小松屋製菓で栃もちを買った。
栃もちというのは、Wikipediaによれば、「灰汁抜きした栃の実(トチノキの実)をもち米とともに蒸してからつき、餅にしたもの」だそうな。
山国には、あちこちで昔からある食べ物だそうだが、生れて初めて実物を見て、初めて食べた。
あく抜きに手間がかかるらしく、小松屋さんのおしゃれな店舗には壁板に直接、その作業の仕方についてイラスト入りの説明が書かれており、なかなか作るのもたいへんな食べ物であることは、なんとなく理解した。
茶色いのしもちみたいな形状で提供されているものを購入して食べてみると、確かにこれはもちで、色が黒いからといって、もち好きに嫌われる理由にはまったくならない。味には褐色の見た目を裏切らない、なんともシブい風味が乗っている。「シブい」と書いたが、実際に「渋い」わけではなく、つまり「cool」という意味で「シブい」と言いたいのであって、この味をなんと形容すれば、分かりやすく実態に即した表現になるのかは、けっこう難しい。しかし、舌の上に乗せてみると、苦み走ったいい男であることは間違いなく、「いいね」などと呟いてみると、違いが分かる男になったような気分を味わうことができる。少々だが。
こういう味は、おそらく食べ慣れるとなくてはならないものになるのだろうなと思う。なんてことない味だが、土地の者にとってはなしでは済ませられないような食品がどこにもある。私の生まれた博多の「おきゅうと」のようなもの。そんな風に理解した。
とすれば、どこまで、その本当のおいしさを分かっているかについては疑問符付きということにならざるを得ないのだが、我が家で奥さんに小豆を煮てもらい、それを乗せて食べた栃もちは文句なくおいしかった。
小松屋さんには、栃もちの中にあんこを入れた「栃もち」や、こし餡と生クリームがコラボレーションする「純正生クリーム入り栃もち」というのが販売されていて、前者の正統派和風甘味ならではの味わいもさることながら、後者の和洋統合、高めあい結婚の結果はなかなかのものだった。これはぜひ、また食べたい。
小松屋さんのホームページはこちら。