『ナクソス・ミュージック・ライブラリー』の不条理

ナクソス・ミュージック・ライブラリー』は、大手から弱小レーベルまでさまざまクラシックレーベルを巻き込んで、インターネットにおけるクラシック音楽の録音媒体販売のプラットフォームになりそうな勢いだが、これはつまり、レコード・CD産業は死んだということなのだろうか? あるいは、レコードやCDを含む録音媒体販売ビジネスは死につつあるということを端的に表しているのだろうか?

かつて、1980年代には1枚2千数百円、3千円といった額で購入していたレコードやCDは、いつの間にか中古ショップで1枚千円で買う商品になってしまった。それが、いまや月2千円で、好きなだけ聴ける商品になりつつある。

とすれば、大手ですら、かつての利益率はとても見込めない状況であることは容易に想像できるし、『ナクソス・ミュージック・ライブラリー』に参加するマイナーレーベルの取り分となると、どう考えても雀の涙でしかありえない。ないよりはまし、という会社がきっとたくさんあるに違いない。ないよりはましと言うことすらできないような会社は、もっともっとあるのではないか。

出版業で、アマゾンや電子書籍の不条理を味わった体験がある者としては、そこで起こっているだろうことが、それとなく想像できる。実態は何も知らないけれど、ほぼ確実に想像できると言い換えてもよい。インターネットはグローバルな、無慈悲な競争をビジネスに強いる。理想に燃えた、あちこちの国で勃興したマイナーレーベルの多くが、生きながらえることができないだろう。

それらの淘汰の進行を孕んだシステムを、消費者としての自分は「便利でいい!」と大喜びで享受しているのである。一人勝ちしたプラットフォームに跪くことで、次にどんな不条理が待っているかも知らないのに。