『ナクソス・ミュージック・ライブラリー』を利用し始めた

ナクソス・ミュージック・ライブラリー』というサービスがあることは以前から知ってはいたが、数年前に少し覗いてみた時にはそれほど魅力のある商品だとは思わなかった。ところが、年明けにクラシックに詳しい知人に最近の状況を教えてもらい、久々にその内容を確かめると、ほとんど衝動買いに近い勢いで契約してしまった。

ナクソス・ミュージック・ライブラリー』は、ナクソスという音楽レーベルを持つ企業が提供するクラシックのストリーミングサービスで、税込みで月額1980円。これだけ払うと、現時点で1万点を超えるCDが好きなだけ聴ける。音質は、AAC+128kbで、微妙な音響の違いを聴き分けるオーディオマニアにはいろいろと言いたいことがあるかもしれないが、CDレベルのクオリティは普通にある。音楽を聴く分には何らの不満もない。

ともかく恐るべきはその品揃え。ナクソスというのは、クラシックのレーベルとしては中堅どころ。老舗筋のグラモフォンやデッカに比べると、世界的には中堅クラスのミュージシャンを集めて、それなりの値段で知名度は落ちてもクオリティは悪くない演奏家で珍しい作品のCDを売る新興会社、というのが、少々誇張を含めて言えば、この会社のイメージだったのだが、このストリーミングサービスで聴けるのはナクソス・ブランドのCDばかりではない。ばかりではない、どこではなく、ナクソスのCDなんてその一部でしかなく、グラモフォン、デッカといった超大手からエラート、テルデック、BISといった有名レーベル、その他諸々の弱小レーベルに至るまで、ありとあらゆるといってよいほどのCD会社がこのストリーミングサービスに参加しているのである。

その結果どうなるか。投入されるCDの数、聴けるディスクの増え方は途轍もなく、数日前にはグラモフォンとデッカが合わせて千枚を新たにライブラリーに加えた。我が家の数百枚程度のCDのかなりの部分は、すでに『ナクソス・ミュージック・ライブラリー』で聴けるはずだ。そこにはカルロス・クライバーの主だったオーケストラ演奏も、ベームベートーヴェンリヒャルト・シュトラウスも、クナッパーツブッシュのワグナーやブルックナーも、これはというものがちゃんとある。少しづつ集めていたハイドン弦楽四重奏曲のあれこれの演奏や、2ヶ月前に買ったばかりの、タカーチ弦楽四重奏団ベートーヴェンウゴルスキーのメシアンも、やはりある。有名ディスクのあれこれが満載。やれやれとしか言いようがない。

もっとも有名CDのすべてに網が打たれている訳ではなく、例えば誰もが知っているところではショルティの『指輪』はないし、ベームモーツァルト交響曲全集も若い番号は入っていないし、グールドの『ゴルトベルク変奏曲』は1955年盤はあるが、1981年盤はないといった具合で、まだまだ歯抜け状態であることは間違いない。それでも手元にない優秀ディスク、有名ディスクは山ほどあり、収容作品のリストを見ているだけでお目々キラキラ状態に陥る。

さらに素晴らしいのは、小さいレーベルが興味深い録音をしこたまこしらえており、そうした演奏がいくらでも聴ける点。実際、このサービスに加入してから、目立たないレーベルの、普段なら購入して聴くことはない作品や演奏を聴くのが楽しくて仕方がない。明らかに録音の聴き方が変わる。それを実感している。

どれだけ聴いても月2千円。CDを置く場所の心配は皆無。いままで集めてきたCDってなんだったんだろう。膨大な時間を使って実行したリッピングってなんだったんだろう。いいんだか、悪いんだか、嬉しいんだか、悲しいんだか。そんな『ナクソス・ミュージック・ライブラリー』。


NML ナクソス・ミュージック・ライブラリー - 全曲無料試聴できるクラシック音楽配信