不愉快な悪夢

昨朝、起きがけに見た夢は、見ている間中、不愉快な気分が蓄積し続けるようで、何故私の脳はそんなイメージを作り出すのか、自分自身に尋ねてみたくなった。
とは言え、夢としては、それほど奇怪でも、奇抜でもない。むしろ、書割はその正反対で、実にちまちまとして、そここおにありえそうな日常の風景のひとこまを描いていた。私はどうやら新しい勤め先に出勤したてのようであるらしい。勤め先は小規模で、そこには数人がいるばかり。その数人が寄ってたかってというか、代るがわるというのか、仕事や勤務の相談をしにくるのだが、それがことごとく私自身の主義と反したり、主義には交わらなかったりするような内容なのである。
具体的な内容はすでに記憶から消えているが、夢に登場した新しい会社の同僚たちは、知人の誰彼に似たような風貌で、そんなことはどうでもよいようなことに仕事の力点を置いたり、やっても仕方がないような仕事を大事にしたり、馬鹿みたいな会社の規則を強調したりして私をいらだたせる。その上で皆がそうだ、そうだと互いの話に同意をする様子で、夢のなかの私は、どうして自分はこんな組織で働かなければならないのかと次第にイライラが増していく。話は誰にも通じずる風ではなく、ギアがどこにも噛み合わない。自分の力では状況を解決できない無力感、うっっすらとした絶望感に突き当たる。そこで目が覚めた。
寝起き直後の、「あぁ夢でよかった」という余韻はずいぶんと長く続いた。ゴジラに追いかけられたり、人殺しに銃口を突きつけられたり、高所から足を踏み外したり、大学を卒業する予定なのに、もしかしたら単位を取れていない可能性が高いことを思い出したりといった類の悪い夢はしばしば見てきたが、今回の「あぁ夢でよかった」は、その種の冷や汗をかくような悪夢とは違って、ただただ不愉快さが募るのだった。
夢から覚めて、枕元のスマートフォンで時間を確かめるともうすぐ5時という時間帯だった。そのまま端末を操作して、グーグルのニュースを布団の中で見たら、トップに置かれていた話題は、これがなんとも不快で、不条理で、まるで悪夢が続いているようだった。


https://www.washingtonpost.com/news/the-fix/wp/2016/05/05/why-a-trump-backing-tow-truck-driver-says-he-refused-service-to-a-sanders-supporter/


ワシントン・ポストの記事は、カリフォルニア州で車が路上でエンコして牽引サービスを頼んだら、やってきた牽引トラックのおっちゃんが、エンコした車にあった民主党バーニー・サンダースのステッカーを見て、牽引を拒否したという話を伝えている。「社会主義者は嘘つきでカネを払わないから、そんなやつらのためには働かない」と言ったという話。おっちゃんはドナルド・トランプの支持者だった。
この不寛容は不気味で恐ろしい。嫌いなやつに対しては仕事しないという、常識的にはありえない判断が、民主主義の王様である米国の、リベラルな土地柄であるはずのカリフォルニアで発生している。ほとんど悪夢の世界。世界がきしみながら悪夢の中に落ちていくような感覚がする。