ジェームズ・ゴールウェイのコンサート

フルートのジェームズ・ゴールウェイのコンサートに行ってきた(10月19日、トリフォニーホール)。

ゴールウェイは、20世紀の後半、あるいは最後の四半世紀に名を残すフルーティスト、ランパル、ニコレ、ツェラー、あるいはガッゼローニ、グラーフ、デボスト、マイゼンといった名人の列に名を連ね、音色の輝かしさとテクニック、さらに大衆的人気ではそれらの人々の最前列に立っていると言ってよい演奏家である。これで最後と思い大枚をはたいて出かけていったが、チケットを購入する際に抱いていた心配は残念ながら大当たりで、複雑な思いを胸にいま帰宅したところだ。

ピアニストと違い、肺活量が技術と音楽を規定する声楽家と管楽器奏者は加齢の影響がとても大きく、衰えが訪れるのが早い。今調べたら、ゴールウェイはもう74歳!それを知っていたら、やはりチケットは買わなかっただろうし、その歳で今日耳にした程度の音楽をまだ奏でている方がすごいというべきだろう。音楽の作りは昔のままで、指も動けばタンギングもしっかりしており、そのあたりはさすがというべきだが、強大な肺活量を土台にしたゴールウェイならではの強い音がもう出てこない。音量が減り、昔はありえなかった小さなミスが時折耳につく。息継ぎなしで、大きなフレーズを作り、いやらしいほどのアクの強さをみせつけていたのがゴールウェイだとしたら、今日聴いたのは、その谺だった。吉田秀和ならひびの入った骨董と言うところだ。そんなおじいさんのフルートなのに、でもそれはちゃんとしたゴールウェイの骨董で、そんじょそこらのフルート奏者が同じ演奏を聴かせられるかというと、そうではない。そのことを確認できたという意味では、やはり行った甲斐はあったのかもしれない。

アンコールに『ダニー・ボーイ』とアイルランドの民族楽器、ティンホイッスルによる『ベルファスト・ホーンパイプ』が演奏された。ゴールウェイの十八番というべきアイルランド民謡。それはそれは、ゴールウェイならではの名調子だった。