ブロムシュテット指揮バンベルク交響楽団のブルックナー交響曲第4番

自分の古いエントリーを探してみたら、ヘルベルト・ブロムシュテットブルックナー4番をN響で聴きに行ったのは「ブロムシュテットも80歳、もうこれを逃すと、あの人のブルックナーも聴くことができなくなるかもしれない」と思い立ったからだと書いてある。2008年1月のことだ。当時、すでに80歳を過ぎていたブロムシュテットの、同じブルックナー交響曲第4番の演奏に、それから5年近い歳月を経てまた再会できるとは正直思わなかった。今回のお相手はバンベルク交響楽団。11月6日のサントリーホールである。

85歳のお爺さんは実にかくしゃくとしたものだった。かっきり7時に始まったコンサートは、一曲目がモーツァルトのピアノ協奏曲17番(独奏はアンデルジェフスキー)、休憩をはさんでブルックナー。盛大な拍手が鳴り止んだのは9時半という長丁場だったが、スーパー爺さんは高くつくられたひな壇を何度も登り降りして楽屋と指揮台とを往復し、背筋を伸ばしてオーケストラと対峙し、巨大な音楽を昔と同じようにコントロールし続けた。響きは充実し、テンポは相変わらずインテンポ基調で弛緩せず、出てくる音楽はどこにも劣化が見られず昔のままではないか。なんという爺さんだろうと思った。何よりも、そのことに感銘を受けたのは、歳を取ることの難しさが少しづつ実感できるようになってきたからだと思う。やっぱり生の演奏会で得られる感興は録音とはわけが違う。あらためてそう思った。

バンベルク交響楽団を生で聴くのは初めてだったが、古くはイストヴァン・ケルテスとか、ケンペ、ヨッフム、最近ではホルスト・シュタインの録音などで聴いていたイメージに比べ、元気で、しっかりとした音が鳴り響き、それが聴く前に予想していたものとは違って面白かった。楽員は若い人が多いし、オケの音がどこまで伝統を残すのかは果たしてよくわからない。それよりも、外来のオケを聴くのが実に10年ぶり(以前に聴いたのは2002年のブロムシュテットとゲヴァントハウス管弦楽団ブルックナー5番が最後)の身には、いかにもドイツのオケらしい響きが懐かしいもののように感じられ、本当に久しぶりに、「オーケストラを聴いた」と言いたくなる気分を味わった。なんだろう、これは。

ブロムシュテットブルックナー4番については、ある意味で驚きは何もない。80年代からシュターツカペレ・ドレスデンとのディスクで聴き続け、4年前にN響でも聴き、物忘れがひどくなってきたとは言え、それなりに記憶に染み付いている解釈の木霊である。その木霊を聴いたこと自体が驚きである。ブロムシュテットブルックナー4番を聴いた、という満足感。また聴けたという満足感。ブロムシュテットの4番は、4番の解釈として最良のものであるという風には必ずしも思わないが、そのこととは矛盾しない満足感。

やはり、生演奏はいい。