港北区民交響楽団 第41回定期演奏会を聴く

日本一技量が高いオーケストラを聴いた翌日に友人が長く参画しているアマオケを聴いた訳だが、前日にN響を聴くのはやはりやめておけばよかったかなあと開演前に心配していたことが、予想もしなかったことだが、杞憂に終わってしまった。すばらしい演奏会だった。

これまで同オケを指導されてきた指揮者の先生が退任され、本公演を振ったのは、三原明人という1961年生まれのプロの指揮者。僕と同世代の方だが、この方の棒でオーケストラから出てくる音楽は、これが同じオケかと言いたくなるほどに、目覚ましく変化した。同じアマチュアの奏者が演奏しているのだから、基本的な技量は変わらないはず。なのに弦のセクションは見違えるように聞こえる。たしかに素の技量はそれほど変わっているとは見えない。音量だってごくごく限られている。ところが、アンサンブルと音程は改善されているし、旋律は歌うし、各セクションが有機的につながって、意図ある音楽作りが手に取るように分かる。これには驚いた。

第一曲目の『牧神の午後への前奏』から、弦の健闘は光っていた。『海』とチャイコフスキー交響曲第5番は、ほんと言うと「大丈夫かな」と思っていたのだが、どうしてどうして。とくに『チャイ5』は野太い弦のイメージがついてまわる曲なのでどうかと思ったが、冒頭の暗くよどむような旋律も、第3楽章のワルツも、第4楽章冒頭の決然とした主題も、十分に説得させられた。微妙なコントロールが必要とされる『牧神』、『海』の色彩感も言うことなし。

三原さんの指揮を見ていて、あからさまな違いを生み出すプロの能力はすごいものだなとあらためて感心した。よい指揮者は、バトンを見ていると背中越しに意図が見える。拍子を刻み、キューを的確に出しながら、それ以上にいまそこで作り出そうとする音楽の流れが見えるように感じられる、そこがプロのプロ足る所以か。普段、プロの先生方の演奏を聴いているかぎり、弾けて当たり前の世界だし、彼らは我々が聴いても分からないようなレベルの違いにこだわっているので、今回のようにトレーナーとしての能力が直裁に見えるような機会はない。

三原さんの棒に果敢に応えたオケに拍手。このコンビ、また聴きたい。

■港北区民交響楽団
■三原明人