世界で戦うのは楽じゃなさそう

前回のエントリーでFlickrのことを書きました。あれからも時間を作ってはFlickrを見ているのですが、ポストされている写真の質はやはりはんぱじゃないですね。玄人はだしというか、プロフィールを見ると実際にプロやプロの卵の人たちがたくさんいるようですが、日本のブログで流通している写真とは正直レベルが違います。世界は広いということですね。恐れ入谷の鬼子母神です。


Flickrを見ていると、いやが上にもウェブ2.0の世界が協調と競争の世界であることを実感させられます。参加している人たちは世界中の人たちの注目、インターネットの時代にあってもっと貴重な資源となった“注目”をめぐって熾烈な競争をしているわけですね。そのための道具としてFlickrはよく出来ていて、自分の写真に貼る単語による「タグ」と、トピックに応じて山のように存在している「グループ」への参加、人気の写真を紹介する「エクスプローラ」、さらに他人の写真にコメントをポストすることなどによって多面的に自らの写真を売り込む機会を創造していきます。手練手管がたくさんあるだけにまめな人とそうでない人の差は歴然と出ることになりそうです。タグも、コメントもグループ参加も、またグループへの写真アップロードのお知らせも、皆参加者が自分で能動的に関わらないと一つとして進まないからです。この点で、Flickrは見事に「自ら助くる者を助く」サービスのようで、投入する時間を含めて、これはまじにやろうとすると大変だなと思います。


とは言え、最後にものを言うのは写真の力であることは間違いないでしょう。この点に関しては、最初に申し上げたように質の高さに関心をするのですが、同時に前回書いたように割り切れない思いが残るのは、明らかに「受ける写真」の範疇があるということです。ひと言で言うと、「派手な写真」ということですね。扱っている題材が派手。マッターホルンのようなドラマチックな景観は文句なく受ける。古い町並みや夕日の海なんか最高です。反対に、僕のブログで褒められた「路地」なんて絶対にダメですね。「なに、この汚い写真」って言われちゃいそう。そう考えると、風景について言えば、日本のカメラ人は最初から戦うのに不利な状況に置かれています。日本は風景を粗末にしてきましたからね。当然の報いと言えば報いでしょう。さらに派手なのはコントラストと色遣い。鮮やかで、光と影の対比がきつい画が好まれる傾向にあるのは誰が見ても明らかです。


撮っている対象が最初から画になって、それをこれでもかというぐらい高コントラストで描かれると、見栄えからするとかないっこありません。見栄えの良さという点では、日本だと馬鹿の一つ覚えみたいに北海道の「マイルドセブンの丘」が素材に取りあげられますが、あれは他に撮る風景がないことを告白しているようなものです。私がしばらく住んだニューヨークなどでも、少し郊外に走れば画になる場所が山ほどありました。そういうところにいる相手と勝負をしようと思ったら、どうすればいいだろうかと考えながら、Flickrの写真を眺めています。


一つには、グローバルスタンダードをあくまで狙うということですね。素材は北海道、日本アルプス世界遺産。もちろんそんな場所に常に行けるわけはないのは仕方がないから、少なくとも手近なモチーフも派手な色遣い、ギトギトの高コントラストで攻める。これが一つのやり方でしょう。「はてな」なんかもそうですけど、Webの世界、多数決の世界では間違いなくマーケティング的な発想が役に立つ世界です。何が受けるのかを分析的に把握して、ある路線を攻める。Flickrで受けを狙うのであれば、原色を如何に織り込むかをマジに考えます。安易ではありますが、そういう発想が有効性を持つのがFlickrはてなの存在する空間なのだと思います。


もう一つは、安易な受け狙いを最初から捨てて、もう一段高いオリジナリティを狙う方法でしょう。ただ、その場合も、あくまでFlickrで受けることを狙うのであれば、はずせない線はあります。例えば、アラーキーの写真では(Flickrはヌードは禁止なので、裸は数に入れていません)絶対に汲み上げてもらえないはずです。この辺りは大衆の嗜好を前提に存在するシステムの限界であって、そういうものの中で遊んでいるという意識は必要だと思います。


と言うわけで、僕もFlickrに手を出してみました。Flickrのよいところは、ダウンロードして写真を共有することを前提に作られており、様々なサイズの画像を誰もが取りだして鑑賞できることです。本日、『写真帳』の方にmmpoloさんからコメントがあり、鳩の写真をダウンロードしていただいたとのこと。このgooのブログからは満足な画像はダウンロードできません。そこで、Flickrの方に同じ写真をアップしておきました。mmpoloさん、ぜひこちらをお使いいただけるとありがたく存じます。写真の左上に大きな画像を表示するボタンがあります。

http://www.flickr.com/photos/taknakayama/


Flickrはときどき画像をアップして世の中の反応を見ることにします。3本を恒常的に走らせるのは難しいのは見えていますが、しばらくは、このブログと『写真帳』、Flickrの3本立てでWeb世界を楽しんで見るつもりです。なお、Flickrは日本語禁止で行きたいと思いますので、どうかおつきあいください。