小林秀雄の断定

吉田秀和さんは優しい声と柔らかな文章の人なのに、厳しいことをはっきりとお書きになる。『マネの肖像』を再読していたら、こんなフレーズにぶつかった。



「空は青い。」といっても、その「青」とはどんな青であるか。青にもほとんど無限の変種があるのである。わたしはある席で、永井龍男さんの短編『青梅雨』を評しながら、小林秀雄さんが「この青というのは緑のことです。こういうふうに使うのは日本だけのことです」というのをきいて、びっくりしたことがある。青が緑を指すのに用いられるのは、中国にすでに山ほど例がある。


江碧にして鳥いよいよ白く
山青くして花然えんと欲す


吉田秀和『マネの肖像』)

断定口調は格好いいが気をつけなくちゃ。我ら偉い人に弱い国の民衆だけになおさら。