秋晴れの日曜日

北日本は荒れ模様の天気らしいが、昨日の雨が空気を綺麗に洗って横浜の我が家からは一日中見事な富士山と丹沢を眺めることができる。冬がやってきた。


HASHIこと写真家の橋村奉臣さんにお会いし、雑談を重ねる中で新しいHASHIさんの試みに協力を依頼され、喜んでと承諾する。何を、どのようにという点については、これからの整理が必要だが、HASHIさんを中心とした日本でのファンの輪が広がる方向を支援する話。僕が手伝うことはそのごく一部だが、自分にとっても新しい出会いを広げる機会にしたいと考える次第。


さて、執筆が山を越えたらしい美崎さんが『三上のブログ』で面白いコメントをさんざん書いている。こちとらはこれ以上邪魔しちゃいけないと思って静かにしていたのに!

中山さんのいい方でいえば、わたしはいつまでも夢想家でいてはだめなのかもしれず、ちゃんとビジネスにしなくてはSmartCalendarはうまくいかないのかもしれないのです。あるいはそれはぜんぜん逆で、SmartCalendarは、もっと思想性を高めるべきものなのかもしれない。どちらなのかはよくわかってない…。

気づいたのは、思想性を高めると、わたし以外に使えるユーザーがいなくなりそうということです。それはちょっと避けたいというか、いちおうだれでも使えると、オープンにしているのですが…。sigh…。←いま・ここ。
■カメラは記憶を想起させる (『三上のブログ』2006年11月5日のコメント欄)


悩める美崎さんだが、そりゃそうだ。SmartCallender/SmartWriteだけでも、全部は美崎さん一人でできない範囲に仕事の範囲は広がっている。それをボランティアベースでやるか、ビジネスとしてやるかは別にして、組織を編成して分業で立ち向かわないと大変だと思う。思想性を高めてもらわないと、常に突き抜けていてもらわないと美崎さんの存在意義はないが、かと言って普及の方をこのままのペースで実質的に放っておくのは実にもったいない。


ところで、同じ『三上のブログ』のエントリーでの、もう一つの美崎さんの書き込みは秀逸である。つまり、美崎さんは『記憶する住宅』というプロジェクトを進めていて一生忘れない人生を送る壮大な一人実験を生きている人だが、その美崎さんによる「知らなければよかったと思う11個の事例と対処法」(結果的には以下の通り12個)はぜひここでも紹介させていただきたい。


過去には辛い、辛い思いでもたくさん詰まっている。それらも丸ごと含めて忘れない生活という話を聞いて「それって悪夢じゃなーい」と感じてしまった女性記者は、美崎さんによると『記憶する住宅』の取材記事でそう正直に書いたそうな。そりゃそうだ。普通人はそう思うんだよ。「忘れたい」人たちに美崎さんはどう答えるか。ここに再掲させていただく。

(1)決定的な秘密。→忘れましょう。大丈夫。忘れられるって。
(2)出生の秘密。自分はほんとうは両親の子どもではなかった!?→育ててくれた両親には感謝できるし、ほんとうの親を捜す楽しみも
(3)虐待された、いじめにあった→つらい体験を克服してきた自分を褒められます。生きていることはすばらしい。
(4)虐待した、いじめた→死ぬほど後悔しましょう。忘れるなんて許されないです。
(5)4歳以前に殺人を犯していた→幼児期健忘症で記憶がないはず。こればっかりは知らないほうがよかったかも。
(6)かれ、かのじょ、配偶者が浮気していた、じつは性転換していた、整形だった、家柄が違っていた、借金を抱えていた、離婚歴があった→知らないということはだまされていたことです。それでよかったのですか?
(7)世界には飢えているひとがいる→募金やテレビ番組も増えているからぜんぶから目を背けるのはそもそも無理。直面すればなにかしてあげる気になるかも。それに世界で起きていることは他人事ではないでしょう。いつあなたがテロの標的にならないとも限らないし、知らなくてよいことなんてないよ。なにもできないのなら、せめて無力感をかみしめるくらいしてあげてもいい。なにもできないことは恥ずかしいことではない。
(8)世界には戦争が尽きない→思想や宗教の対立はたいへんなんだな〜と思う。正義を振りかざすひとほど信用ならない。
(9)耐震偽装されていた、詐欺にあった、だまされていた→だますよりだまされるほうがまだ気が楽です。どうしても許せなかったら、「許せないノート」に大きく名前を書いてカッターナイフで切り刻んでみたらすこしは気が晴れるかも。
(10)2ちゃんねるにさらされた→匿名なので反撃はむずかしい。これも許せないノートを使いましょう。いずれしっぽを出すって。わかってるんだよ****くん。
(11)虫歯になっていた、ガンだった、不治の病だった→知って最後の人生を楽しんだほうが、不安はないでしょ。未練もないでしょ。知らないで死ぬのは不幸だよ。
(12)みんなが楽しそうにしていた会合に参加できなかった→これはちょっと寂しい。たしかに寂しい。でも大丈夫。仲間外れにしたわけじゃないです。bookscannerさんのおかげで出会えたのです。次はサンフランシスコで。
というわけで、2:10で知ることのほうが人生は豊かになると思います。


うまいオチが見つからない。なかなか見事なステートメントだと思う。同時に、こうした強靱な心を持った人じゃないと忘れらない生活には耐えられないかもとも感じる。体験は忘却の彼方に去ることなく、凝固せずに常に赤い血を流し続ける人生だ。数年前、軽い鬱に悩んでいたときに美崎さんに会って、このリストを提示されたら気が楽になっただろうか、その反対だっただろうかと思いをめぐらしている。