橋村奉臣作品の機知

一昨日、橋村奉臣さんの写真展にいった話をちょっと書いたら、『三上のブログ』で三上先生がとりあげてくれ、僕が見て感銘を受けたドキュメンタリー映画『島ノ唄』での吉増剛増さんの言葉につないでいただいたうえに、橋村さんの写真の意味をも綺麗に読み解いていただいた。三上さんの直感に驚きつつ感謝します。

■写真の批評性(『三上のブログ』2006年9月17日)


そのことに刺激されて、もう少し橋村奉臣さんの作品について話をすると、この作品展に展示されているカラー写真の静物には、先日話題にした、瞬間の動きをとらえたものばかりでなく、“腐敗”をテーマにしたいくつかの作品が含まれている。皿に盛られた洋梨、ブルーベリー、イチゴが次第にカビに埋もれていく様をたどる連作、腐敗物に黒々とまみれた洋食器とナイフ・フォークを写した『クリスマスの思い出』(下記チラシ(p2)に掲載されています)など、時間の推移をものの姿に仮託して提示するいくつかの作品はウィットに富んでとてもユニークだ。


一昨日紹介した一瞬をとらえる超高速度撮影と、時間の経過を見る者に提示する対照的な作品群。橋村さんは、高度な写真の技術の持ち主であると同時に、画と物語の融合をとても意識的に考え、その延長線上でこうした題材を選びとる感性と戦略性をお持ちである。撮影者の情念の動きをも一瞬に閉じこめたような超高速度撮影も面白いが、こうした練りに練った物語も写真の可能性の幅を見る者に教えてくれる。こんなことを書いていたら、もう一度見に行きたくなってきた。


展覧会のWebサイトはダウンロードとコピーに気を遣っており、リーフレットのデジタル版の画像は作品の全部を一度に見せないようにしたり、小さな画像には「(c)HASHI」のすかし文字が入っている。なるほど写真家にとってWebは諸刃の剣になりかねない道具なのですね。

■HASHI[橋村奉臣]展開催告知チラシ(p1)
■HASHI[橋村奉臣]展開催告知チラシ(p2)

*橋村さんの御名前に誤記があり、HASHI展実行委員会よりご指摘を頂きました。お詫びとともに訂正させていただきます(9月21日追記)