ワールドカップ

日本の3大会連続ワールドカップ本大会出場が決まる。

初めてワールドカップを知ったのは82年スペイン大会だった。当時、ドイツの田舎町にある語学学校で、休み時間にテレビで流れる試合中継を欧州や南米の各地から来る同級生と観る一月を過ごした当時を思い出す。

夕刻、静まりかえった住宅街を歩くと、ふいに「Tor!(Goal!)」という歓声が家々の底から沸き上がる瞬間があり、ドイツチームが得点を上げたと分かる。

ジーコという名のスタープレイヤーの名前を誰もが口にし、ドイツのキャプテンであるルンメニゲ、ゴールデンルーキーのリトバルスキーを新聞、テレビが追いかける。準決勝のドイツ・フランス戦で延長の末ドイツが奇跡的な逆転勝利を上げた試合では、下宿の食堂に置かれた小さな白黒テレビの前で体が震える思いを味わった。スポーツを観てそれほど興奮した経験は、その後も覚えがない。

世界がサッカーという遊びに征服された錯覚に襲われ、当時、大衆の関心事にサッカーのサの字もなかった日本ではこの喧噪を一部の物好きなサッカーファンしか知らないのだと考えると、あらためて世界は広いと思わざるを得なかった。日本がワールドカップに出場するなど思いもよらなかった20年前の思い出だ。