リアルとヴァーチャルのつなぎ目

昨晩は金城さんたちのおしゃべり会「わいわい」に出席後、もう一件つきあいの飲み会をこなし、ビール2パイントとワイン数杯の酔いでへべれけになって帰宅。

「わいわい」に途中から入り込んだら、話題満載のクラシックブログ『CVLTVRA ANIMI PHILOSOPHIA EST ― おもにクラシック音楽な日乗』のsergejoさんが到着していて、初対面の方に向かって「中山隆という匿名でブログを書いている中山さんです」などと、このブログを読んでいる人しか分からない紹介をしやがる(3日前のエントリーをご参照ください)。紹介された方の目が点になったのはご想像の通りだが、混乱を起こした張本人は「中山隆と名乗っておいて、匿名などと訳の分からないことを言い出すのがいけないんじゃないですか」などと涼しい顔である。

そのsergejoさんが、「中山さん、会社で何やってるんですか」と訊くので、あらためて名刺を見せたら、「えっ、中山さん、管理職?! ブログに仕事の話何も書いてないじゃないですか! いいんですか、管理職がブログなんかやっていて」と、冗談とも本気ともつかぬ、かつ世間のまなざしを代表するようで、けっこう問われる側にとっては難しい質問を突きつけてきた。大企業を辞めて、クラシックのeコマースサイトで飯を食おうというアバンギャルドな人生を突き進む御仁とは思えないベタな質問だとも、そういう人ならではの鋭い質問だとも言える。

sergejoさんの問いは、「世の中の会社の中間管理職は、ブログなんかやらない」という世間一般の常識を下敷きにしたものだが、そうかもしれない。おそらく現時点で、僕は自分自身のリアルの世界での社会的地位、役割を考え、その平均的ライフスタイルや社会意識を思い描くとすれば、そこから大きくはずれたところにいる人間であることは間違いない。ただ、その「平均から遠い」感覚は子供の頃から常に抱いていた思いであるし、平均に近づくことを自覚的に拒否してきた部分もあるので、彼の質問に対しては「全然いいんです」と答えるしかない。

sergejoさんにあらためて自覚を促されたわけだが、このブログは僕の社会生活の中でもっとも時間をとられている職業生活とまったくもって切れている。この1月にそれまでと異なる仕事が始まったときに、方向転換をしようかとも考えたのだが、やはり考え直しやめた。これまでこのブログでいくらかなりとも直接仕事に関係する話を書いたのはただの一度だけ。そのおかげで、ある方とはブログ上の友人関係と僕自身が感じるようなやりとりをすることができるようになったし、その後お世話になりっぱなしの『三上のブログ』の三上さん(id:elmikamino)ともお近づきになる契機を得たのだが、これは今後も唯一の例外としておこうと思っている。僕自身にとっては、このブログのコンテンツ世界自体が十分にリアルな存在になりつつあるということもある。

私と社会との折り合いを付けるのが簡単ではないという自己認識を持つ者の自己表現が、リアルの世界における自己表現とブログを含めた創作物におけるそれとの間にズレを起こすことは、かなり一般的にありえることではないだろうか。その場合に、実名を間に挟んで両者の橋渡しに余地を残しておくことは、一つの人格にとってある種の安全装置をセットするのと同じ意味があるとも言えるはず。と書いておいて思うのは、結局のところ僕が「リアルの自分あっての世界だ」と怯えに近い感覚を抱いているからなのだろう。