年に一度の再会と楮佐古晶章さんの作品のこと

昨日は、ワシントンに住むNを囲んで食事とおしゃべりの夕刻をすごした。高校時代の友人3人で気のおけない自由な時間。国際機関の中枢で想像を絶するような日々を送っているNの話を肴に中華街で一次会。その後、大型客船が停泊する大桟橋で港横浜の夜景を楽しみながら夕涼みをして、近くのレストランが路上に置いた椅子に座ってカクテルを2杯、3杯。仕上げにまた中華街へととって返し、福満園の麻婆豆腐を食して12時近い時間に帰宅。


Nに「最近読んだ本で面白いものある?」と訊かれて、これというものを思い出せず。ジャズファンのNに『奇跡のモーツァルト』と言うわけにもいかない。思わず「20数年ぶりに読んだ夏目漱石の『それから』かな」と答えたら大いに笑われた。「今の日本ってお涙頂戴ものがすごく多いのは何故なんだろう」と訊かれて、これも「うーん」と唸って二の句が継げず。


Nの問いかけへの回答。最近、と言っても春先だったと思うが、銀座のニコンのギャラリーで観た写真展が印象に残っていることを今日ふと思い出す。「最近読んだ本」ではなくて「見た写真」なのだけれど、写真とともにそこに添えられている単文が印象的で、僕はある意味でその写真を読んだのだった。ほぼ同じ内容のコンテンツを、その作者、楮佐古晶章(かじさこ あきのり)さんのWebページ[MINHA VIDA:]で見ることが出来る。「私小説」というほとんど私語になりかけているフレーズを思い出すような、ウェットな写真と文章に写真。おそらく今の日本でこういうコンテンツは流行らない。もっと単純明快にお涙頂戴になっていないと日本のマスには受けないだろうが、僕の情動のある部分はかなり率直に反応した。そこに写っている南米の風景や人は、自分には何の知識も関係もない地球の裏側の事物なのだけれど、作者は僕らと同じ世代の日本人なのだ。そう言えば、昨晩中華街のレストランや駅のホームで出会ったたくさんの若者がまるで外国人のように見えたっけ。


会場にいた楮佐古さんと言葉を交わし、Webサイトを教えていただいた。このブログでもっと早く紹介するべきだったのかもしれないが、なんとなく後回しになったのは彼の作品を評価する層とブログを読む人とはちょっと違うかも知れないと考えたことが理由の幾ばくか。あとは自分のために取っておきたい気分がしたから、というのがあながち嘘でもない答えになるだろうか。次に個展があるときにも行きたいと思っている。


■楮佐古晶章のWebページ
[MINHA VIDA:]
[南米漂流]