まともな精神を維持するために

昨日のこと、朝の6時半に自宅を出てマンションの階段を下り始めたところで、黒い大きなかげとすれ違う。はっと顔をそちらに向けたら、カメラを片手に帰宅途中のK君の笑顔があった。K君は、同じマンションに住む高校時代からの友人だ。歴史を持つ建築事務所で公共建造物などの設計を手がける一級建築士だが、はるか昔に知り合ってからまるで雰囲気の変わらないこの万年青年は、筋金入りの鉄道趣味の持ち主でもある。珍しい電車が走ろうものなら、どこにでも出かけていく。これから出勤という平日の朝でも、こうして電車の撮影なのだ。

こういうばかばかしいほどまっすぐな趣味の存在は、この国でまともな神経を保持しながら生活していくためには多かれ少なかれ必要な要素だと僕は思う。責任感が強く、激務のK君もストレス、疲れで何度も辛い目にあっている。悲しいかな、おそらく、それが豊かなこの国の組織人の平均的な自画像ではないか。

K君の趣味と人となりは彼と奥さんの競作サイト「KあんどKの部屋」で公開されている。K君を素材にした奥様の描く漫画とK君のサイトが共存する個性豊かなWebサイトで、昔からのファンが多いらしい。忙しいK君の更新は最近控えめだが、末永く続いていくのだろうと思う。