頂に立つことは問題ではない

昨日、靴職人の山口さんの番組を観て感銘を受けたことを文章にしたが、書いた直後から筆が滑ったなという思いにとらわれている。山口さんの仕事や人柄を伝える番組を観て「へえ」と思ったことは嘘ではないのだけれど、ただ、だからと言ってこのブログでトピックにすることかと考えると違うような気がしてきた。


私の場合、おそらく番組の制作者が意図したとおりの感銘を受け取ったのだと思う。そういう人間が、「昨日観たテレビ番組はこんな内容で、こんな風によかったですよ」と書いたところで、果たしてそこにメッセージがあったのかと考えると、自分でやっておいて言うのも変だが、首をかしげざるを得ない。それは日記に書いておけばよいことなのではないか?


『プロフェッショナル 仕事の流儀』の前に放映していた『プロジェクトX』も同じだと思うのだが、あの種の番組を観て単純・率直に感銘を覚える私のような人間は、放っておけばいいのだ。職業選択というトピックを語るとき、私にとっての個人的な課題は、我が馬鹿息子たちを如何に社会参加に向けて動機づけることができるかなのだが、これはそう簡単ではない。松井選手や山口さんのようなその道のスターが「継続こそ力なり」と語っても、通じるものには限りがある。


『プロフェッショナル 仕事の流儀』の山口千尋さんの放送分に関するページには「挑み続ける者だけが、頂に立つ」というタイトルが表示されている。私の目下の関心は頂を目指すことにはない。普通の庶民として、普通に職業について、自らの生活と人生に対して充実を感じるような生き方を多数の人々が得られる社会が存在すること。私の肉親や知人もその一員として生活を続けていること。そのために「常に前進」といったアグレッシブな方法を選ぶ人たちもいるだろうが、9時から5時まできちんと会社勤めを行い、帰宅してプロ野球を楽しむ人生だってよい。自分に正直であり、それによって心の安寧が得られるのであれば、どちらだってありだ。つましい望みではある。