ブロムシュテット指揮NHK交響楽団のベートーヴェン

NHKホール、天井桟敷の自由席、E席でブロムシュテット指揮N響ベートーヴェン交響曲第2番と皇帝コンチェルトの2曲を聴いた(9月26日)。

今年もブロムシュテットさんは衰えが見えず、オーケストラを駆り立てて音楽を推進させる技は健在。きびきびとしたアップテンポのベートーヴェンだが、昨年聴いたモーツァルト同様、細かいニュアンスの襞が埋め込まれるのはさすがこのコンビ。安心して楽しめる演奏である。

ただ、この日は小さい編成だったので、巨大なNHKホールの3階席で聴くと、音響的には物足りない。演奏は下のほうでやってます、私たちはそれを上のほうで聴いています、という感覚を少しでも抱くことになると、満足感は微妙に阻害されてしまう。去年の演奏は珍しくNHKホール1階の前の席で聴いたのだったが、遠い場所で聴くのとは生々しさの違いが顕著で、納得感は段違いだった。そんなことをちらと思い出してしまった。

ブロムシュテットさんのテンポは若いときのまま。音楽は過度な思い入れで重たくならず、竹を割ったような清涼感に溢れたベートーヴェンが聴けた。良くも悪くもまさにブロムシュテット。あまりにも端正すぎないか?と思わないではない。このプログラムでブロムシュテットとそうなるだろというクオリティを維持し続けているのが驚異的である。今年も聴けてよかったというのが、結論かな。あのお元気さだと次がないという事態はまだまだ想像できないけれど、さりとて、88歳という年齢を思い起こすと、いつまでも続くことを期待してはいけないわけで。