ウィーンに来てみると

20数年ぶりにウィーンに来ました。前回は、一応曲がりなりにも仕事ですと言える状況で、東京から連れて行った人を案内するような役回りだったので、来たと言ってもそれなりに慌ただしく、街を見たのか見ないのか、よく覚えてもいない程度の滞在でした。でも、その時には、あぁウィーンに来た、という感慨が間違いなくあったのだけは覚えています。おそらく2泊して、2日ともに夜は同行者と音楽会で遊んだのですが、そこで音楽会に行ったことを含めてウィーンを体験しているというだけで感動していたはずなのです。

その前にウィーンに来たのは、生まれてバックパックを背負って海外旅行をした20歳の時で、国立歌劇場の立見席からグルヴェローヴァとカレーラスのルチアを観たりして、この時はそれこそ全身全霊で本場の音楽と雰囲気に感動していたはずです。

今回、数えて3度目のウィーンは、そうした感動はほぼ何もなく、ひどく冷静に、当たり前のように、すべてを受け入れています。空港から電車に乗って、街に入ると思い描いたウィーンの街があり、思い描いたような人たちがいる。あぁ、相変わらずウィーンだなあと思うぐらいです。自分の様子を客観的に眺めてみると、子猫がおもちゃにじゃれていたのが、年をとってふてぶてしくなっているようなもので、自分自身あまり気持ちよくない部分もあるのですが、猫も人間もそういうものだと割り切ればいいのかなとも思います。

でも、久しぶりに、日本の外に出てみて、そんな自分を観察するのは面白いです。来てよかったなと思います。