NHKのニュース番組を観ていたら

NHKの夜9時のニュース番組を観ていたら、突然以前の勤め先で一緒に働いたS君が出てきて、日本の家電メーカーの3Dテレビへの取り組みについてコメントをしました。彼とは、私がニューヨークに駐在しているときに東京からアメリカに出張に来た彼と共通の上司であるH部長と一緒に業界のトレードショーを回り、いくつかの電気通信事業者連邦通信委員会を訪ねたりしたことがありました。90年代後半のことです。

そのツアーの初日、彼とホテルで最初に会った際に、シャツの裾を出しっぱなしにしているのに対し文句を言ったのを覚えています。そのことしか、その出張の際の出来事として覚えていないのです。アメリカでは誰もそんなシャツの着方をしないため、そのときにとても奇異に感じ、印象深かったのだと思います。

ところが、日本に帰ってみると、シャツの裾を入れているのは私だけ。私はとんでもない田舎に来たような気分になったのでしたが、周囲の若者にはダサイおじさんとしか見えなかったはずです。あれからもう10年。いまでは、シャツを着るたびに、ズボンの中に裾を入れるか、入れないかでちょっと悩みます。悩むのが正しいのか、間違っているのかと自問をし、そのたびにどこかの塀の上でバランスをとっている自分を想像してみます。常識や正しさなんて、実はその程度のものなのかもしれません。

S君には、あのとき悪いことをしたな、悪気なかったんだけどな、と帰国してからの私はときどき思うのです。