三が日

正月早々、レンタカーを駐車の際にぶつけて壊した方もいらっしゃるようですが、私も週末に、5分以内に2度自転車で転ぶという前代未聞の失態を演じ、両足にあざを作ったうえに大事なズームレンズをぶっ壊してしまいました。レンズさんは自分の身代わりになってくれた、一眼レフ本体は壊れなかった、と前向きに解釈することで気持ちが萎えないようにがんばっているところではありますが、やっぱり痛いものは痛い。財布も痛いけれど、五十になっても子供の頃親から言われていた「注意力散漫!」という叱責の声から逃れられないような鈍くさい怪我をし続けているのも痛いし、「いや、もしかしたら運動能力が鈍り始めている結果ではないのか」と考えると、それも痛い。新年早々なにやってんだか、であります。

悪いことばかりではありません。その打ち身をつくった足を引きずって女房と映画を観に行きました。ピクサーのアニメーション『カールじいさんの空飛ぶ家』。原題は単刀直入に『Up!』です。考えてみると、夫婦だけで映画に行くなんて、新婚すぐに『フォレスト・ガンプ』を観て以来じゃないでしょうか。素敵なお正月になりました。映画はよかったですよ。すでに鑑賞していた娘の「よかった」という見立てを頼りに、筋はまったく知らずに出かけたのですが、あんな単純な話に、あれほど心を揺さぶられるとは思いもよりませんでした。夕方に始まる字幕版を観たので、小さい子供や家族連れは少なく、若いカップルが目立ちましたが、映画はむしろ中高年に照準を合わせたようなテーマで、若い人たちにはどこまで真実味が感じられたか。私も、もし十年前に観ても、感じる部分は限られていたかもしれないと思いました。映画の感想は、気分が乗ればあらためて書きましょう。

そんなこんなで、サザエさんにでも出てきそうな、のんびりとしたエピソードが散らばっていた平和なお正月でした。平凡で、悲しいことがない。それが一番の幸福だとしみじみ感じながら過ごしたお正月と言ってもよいかもしれません。