個人的には、今年はいろいろなことがあった。親父が昨年の12月に死んで、それを契機に変わったこともあれば、それとはまったく異なる個人的な理由に由来することも、さらには経済のトレンドに翻弄された部分もあるが、ともかく自分を包む世界が大きく変容し、世の中の見え方が以前とは違ってしまったと言っても大袈裟ではないかもしれない。いや、やはりそこまで言ってしまうのは大袈裟かもしれないけれど、そんな心持ちの中で齢50の坂を越えた。

良いことを挙げれば、若い自分が持っていた欲望がやけに自然に収縮していることで、歳をとるのは悪くないと、その部分だけを見れば思う。もしかしたら、自分の一生の中でもっとも素敵な季節なのかもしれない。

季節と書いたが、やはり人間の一生は春夏秋冬の比喩を重ねるのが自然だなと、その文字を自分で追いながら思う。厳しくない冬はないはずだけれど、その中でも、出来れば、ときにはあたたかな小春日和の日々を感じたい。そう思う。僕は人生が戦いだとは思わない。戦いは可能な限り避けて生きたい。逃げて、逃げて、逃げまくりたい。それでも逃げられなくなったら……。それを考えながら来るべき冬に備える人生の秋にしたい。