紋切り型の表現

新聞や雑誌を文章を読んでいると、書かれている意味内容と同時にレトリックが気になる。ネガティブな方向に気になるのは、紋切り型の表現を安易に使っているケースで、自分もよくやる間違いではあるが、たとえば、次のようなケースがそれに当たる。

米国時間12月14日。松井の来季の所属球団が決まったというニュースは、またたく間に全米を駆け巡り、太平洋を渡って日本にも伝わった。

(「松井秀、エンゼルス入り決断の理由 かみ合わなかったヤンキースとの思惑」(sportsnavi.com))

ニュースが「全米を駆け巡り、太平洋を渡って日本にも伝わった」のは飛脚がコミュニケーション手段の主流だった時代、電信や電話が最新の通信技術だった時代の修辞で、インターネットでニュースを読んだり、見たりする時代には、感覚と明らかにずれがあって、なんだか不思議な味がある。

この種の紋切り型の表現に気をつけよう、と実践的なアドバイスをしてくれているのが丸谷才一の『文章読本』。たしか、「地を這うゴロ」みたいな野球でいつも使われている表現が、現実とそぐわないといった話が出てきていたように思う。もう読んでから20年以上経っているので、うろ覚えで書いているのだけれど、週末にある方から丸谷才一の名前を聞いたので、スポーツ記事を読んだときに以上のような感想が頭に浮かんだのだと思う。もう一度、久しぶりに読んでみようかと思っている次第だが、最近思ったほど本を読めない。


文章読本 (中公文庫)

文章読本 (中公文庫)