今日は写真家のHASHIさんが国立西洋美術館で開催した、写真評論家の飯沢耕太郎さんとのトークショーにお邪魔してきた。年配から若い方までHASHIさんのファンは実に広がりがある。日本の写真界の現状、日本の社会の現状に対するHASHIさんの歯がゆい思いが見え隠れするトークは面白く、かついろいろな意味で刺激的だった。
HASHIさんは彼が住まう業界の、世界的な水準の競争の最先端を走り勝ち抜いてきた人だ。情報化が進展し、いわゆる経済のグローバル化が進行する今日、HASHIさんの経験は日本の国にとって一つの糧になってよいはずなのに、彼が言いたいことは東京では上手く伝わるとは限らない。HASHIさんはそんななかで、焦らず、騒がず、何事かを伝えようとし始めているのだが、それでももどかしさは常にどこかに残ってるに違いないと思う。海外に住まって憂国の念から発言をする人たちには、多かれ少なかれHASHIさんと同じような思いを抱いているのではないか。同じ平面で情報交換をしているように見えて、その実、決して混じり合わない、異なるレイヤーにいる二人の人物を想像する。
こういうことは、かつて文学の主題ではあっただろうが、今はそれが経済の主題に移行している。それが我々がいる現在だ。そんな感想を抱いた。