大雨の午後

テレビニュースでも取りあげられていたが、今日の東京は断続的に強烈な雷雨にたたられた。午後、東大と神楽坂へと出かけたが、5時過ぎに神楽坂での仕事を終え、建物の玄関に出てみたところ、あまりの雨の勢いに唖然とした。「バケツをひっくり返したような」という形容がそのまま当てはまるような想像を絶する量。さらにすぐ近くに落ちている気配の大気を切り裂く雷鳴。

雨宿りをするという選択肢はあったが、駅に向かってたった5分少々の道のり。ならば空に下に飛び出すしかない。そう考えるのは行為に英雄的な色合いを添えたいからでも、遊びの要素を感じているからでもない。単に雨が治まるまでの時間を待てないのだ。せっかちさはいつか身を滅ぼすかも知れないし、どこかで自分を前に押し出す力になってくれるかもしれない。ともかく、そんな風にして、屋根の下にとどまる人々の間をすり抜け、コンクリートの世界に大音響をばらまく雨の柱の中に飛び出した。

もしかしたら、うまく歩けるかも知れない。そこそこの濡れ具合で駅に到達するかも知れない。そんな淡い期待は、しかしたったの10秒で消えた。足もとは坂を川となって流れ落ちる雨水。空からは無数の柱となって雪崩落ちる雨水。あっという間に靴下はぐずぐずになり、膝から下は濡れてたぽたぽと音を立て始め、背中は冷たくなってくる。なんと楽しい。半分はやせ我慢、半分は気宇壮大な気分になって歩き続けた。傘をさすのを諦めたジーンズとTシャツの若者とすれ違った。いいね、その諦念。その覚悟。雨宿りをする人々を尻目にやけに長く感じる道のりを駅に向かって下っていった。