告:『シュンポシオン横浜』、12月開催です

「シュンポシオンとはいい言葉ですね」と明さんが言った。「シンポジウムといふやつはなるべく敬遠したいんですが、一緒に酒を飲んで談笑する方のシュンポシオンなら、毎日がシュンポシオンでもいい」
「毎日がお祭りでは困りますけど」と聡子さんが言ふ。
倉橋由美子『シュンポシオン』より)


大分から、京都、名古屋、横浜と続いた一連の「会議」が成功裏に終わりました。我らが「横浜小会議」もお集まりいただいた皆さんのおかげで大成功、次への期待がますますふくらみます。鉄は熱いうちに打て。では、ということで、ここに次の横浜での集まり開催を宣言しておきます。

日取りは12月13日(土)午後、場所は横浜みなとみらい地区ないし中華街です。場所や正確な時間は参加人数がだいたい見えてから決めたいと思います。

「横浜会議」という名称は、最初に「飲み会をやりましょう」と書いたときに、冗談めかしてつけたタイトルだったのですが、他の地域に伝播して、今回の同時多発イベントの合い言葉になりました。皆さんのノリのよさをニヤニヤと見ていた次第です。ただ、私としてはおしゃべりの会を会議と名付けるという冗談のつもりだったので、会議よばわりはこれでいったんやめておこうと思います。ほんとに真面目な会議だと勘違いされても困るし、大きな会議施設のある横浜では「なんとか学会横浜会議」みたいなネーミングって結構あるんですね。それらに追従しているように思われるのもつまらない。

というわけで12月に開催するイベントは「シュンポシオン横浜」と命名します。倉橋由美子に『シュンポシオン』という私が愛好する小説があります。冷戦さなかの1985年に書かれた作品で、舞台は2010年頃の伊豆。第三次世界大戦勃発の危機の中、その地に疎開してきたインテリたちが世界の終わりを控えた暗鬱な情勢下でおしゃべりを続けるというまか不思議な骨組みを備えた作品です。私たちの集まりも、かみしもを着てがちがちに議論を戦わせるシンポジウムではなく、お酒を傾けながら、心はあくまで優雅に、楽しく今日と明日を語る会でありたい。そんな思いを込めて「シュンポシオン」と気取ってみました。そもそもの語源は言うまでもなくプラトンの『饗宴』(シュンポシオン)です。

現時点で思い描いている当日の趣向ですが、一人あるいは二、三人の発表/質疑応答の時間と懇親会の二本立てでいけないだろうかと考えています。すでに京都会議は金城さんのレクチャー付きだったようですが、先日の横浜での皆さんの内容豊かな挨拶、その二日後に聞いた中村さんの講演と立て続けに体験して私が思ったのは、こうしたメンバーと一緒なら、お酒を酌み交わしながら、大人の雰囲気の中、楽しく学び続ける場所を共有することが出来るかもしれないということでした。中村さんのような一流の研究者、美崎さんのようなIT世界での有名人のみならずとも、皆さんそれぞれに問題意識と語るべきトピックをもっていらっしゃる。ぜひ、それらをもっと皆で共有したいと思いました。そのためには単なる飲み会というセッティングだけではなく、発表の時間も欲しい。横浜では、美崎さんから、「時間があれば現在開発しているアプリケーションのデモを見せてあげる」という言葉をもらいながら、果たせなかったということもありました。ぜひ、皆さんの話をじっくりと聞いて酒の肴にしたい。それがこの企画の考え方の骨子です。

安く借りられそうな会議室で2〜3時間、その後近くに移動して乾杯と懇談という形式を想定しています。お昼過ぎから始めて早めの夕食をともにするという感じでしょうか。気の早い話ではありますが、趣旨にご賛同いただける方、参加を表明される方は、ぜひこのエントリーのコメント欄、あるいは中山のメールアドレスまでその旨お知らせ下さい。というのは、貸し会議室を予約する都合上、ある会議室の予約がスタートする3ヶ月前におよその規模を測りたいという事務的な要請があります。もちろん、「みんなで盛り上がっていこうぜ」という意味合いも含まれています。ぜひ、ご協力をお願いします。

申し込みの状況はこのブログでご報告をします。その際、ハンドルネームでどなたがご参加かをお知らせしたいと思いますが、「出たいけど、参加は内緒にしてね」という方はその旨お知らせ下さい。ただし、当日は参加者リストとして皆さんの実名とメールアドレスを共有させていただきますので、その点はご了承下さい。

なお、「この人の話を聞いてみたい」というご意見・ご要望も大歓迎です。ぜひ、お寄せ下さい。私はいますぐにでも聞いてみたい人が実は10人以上もいて、楽しく困っています。10月ぐらいには発表者と最終応募のお知らせをしたいと思います。

最後に私が個人的にこのイベントに託す思いですが、ぜひ、共感する力を皆で育てていけたらと考えています。大して高尚なことを考えているわけではないのです。卑近な例ですが、長男が片方の膝を手術し、「横浜小会議」の日に一週間ぶりに退院をしてきました。松葉杖をついて大学に行っているのですが、誰も電車で席を譲ってくれないというのです。「みんな、さっと目をそらしたり、寝たふりしやがんの」という報告を聞いて、「そうなんだ!」と日本人の民度の低下をあらためて悲しくも実感させられたところです。これは単純で分かりやすい例の一つではありますが、いったいに我々日本に住まう者は周囲の人たちの喜びや悲しみを自分に当てはめて理解をする能力、感性、倫理観を著しく低下させていないか。他人とは挨拶一つすら満足に出来なくなっていないか。それはまずいだろう、という感想があり、こうした集まりを通じて他者に共感をする感性を少しでも磨いていきたいと思っているところです(やたらと誰とでもハグしなさいと言っているわけではありません、念のため)。

「横浜小会議」の15人という人数は、場の一体感を形成する規模としては最高によかったと感じていますが、今度はおそらくもう少し大きくなりそう。20名を超えたとしてもなんとか、和気藹々な雰囲気を残していきたいと思っています。

というわけで、12月13日、皆さんとお会いできるのを楽しみにしています。